紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」
とにかくビックリした。そして次に呆気にとられた。
初めて新木枯し紋次郎のタイトルロールロールを見た時のことだ。一言で言うと「ナンジャ、コリャ?!」である。

当時CMディレクターとして売れっ子だった「大林宣彦氏」が、デザインと撮影を任された。彼は同じ年の7月に、「HOUSE ハウス」というホラーファンタジーを劇場作品としてデビューさせている。ちなみに原作者の笹沢左保氏は、この作品に「木枯」という役名で鰐淵晴子さんと出演している。
彼の作品の特徴は、映像には必ず特撮が取り入れられ、色彩も豊富……どう考えても今までの紋次郎の世界とは全く異なる。対極にあると言ってもいいだろう。

市川監督の映像も斬新であったが、コンセプトが違う。市川氏は、素材の美しさを組み合わせたり分割したり、スピードやアングルに変化をつけたりとスタイリッシュなタイトルロール作りであった。
しかし大林氏の作品は、映像の中に実像と虚像が同居している。まるで幻覚を見ているかのようで、これを「トリップ」というのだろうか。(実際、経験していないのでわかりません)
とにかく、前作を知っている者には、「新……」は前シリーズとは全く違うのだということを宣告された一瞬であった。

アバンタイトルの後のタイトルは赤文字の活字体。前作品は青文字であった。
主題曲は「やしきたかじん氏」が歌う「焼けた道」。作詞は中村氏本人である。今でこそ、たかじんの知名度は高く、特に関西地区では圧倒的な人気度を誇っているが、当時の私にとっては?であった。ただ、歌唱力はあるなあ、と素人ながら感じた。
作曲は「猪俣公章氏」で、ヒット曲を量産している作曲者である。マイナー曲であり、前作とは雰囲気が随分違い、どちらかというと内に向かっている感じがする。

前奏のトランペット、炎に包まれながら転がる木製の車輪、明らかにマカロニウエスタン調である。
斬新なのは映像だけでなく効果音の取り入れ方にも見て取れる。鴉の鳴き声、雨・風・水・雷と主題歌にかぶせて聞こえてくる。
前作と同じように紋次郎は向こうからやって来るが、今回は荒涼とした土地。緑が重なる山々は見あたらず、どこかアメリカ西部の雰囲気が漂う。正面からの顔のアップ。さすがに貫禄が増していて、圧倒される。

スタッフロールには前作に名前を連ねていた方々の懐かしい名前が見え、少しホッとする。
目まぐるしく映像が変わる中、どのシーンにも合成が入っている。草鞋の紐を締め直し、路傍の小さな花を手に取ろうとする(指先しか見えませんが)カットは、私は好きだ。
紋次郎の横顔のアップ。くわえた楊枝の先に雨のしずくが光る。心なしか左頬の刀傷が余り目立たない。この後、合成は加速していく。

セットで撮影かと思われる、いかにも虚像の夕焼け。打ち寄せる波しぶきは赤く燃え、まるでマグマの流れのように見える。その中で紋次郎は見えない敵と戦っているのか、それとも己の心と葛藤しているのか、激しい動き。
滝は青く水は逆流し、その真ん中を紋次郎は歩く。冷たく冷え切った心を象徴しているのか。
紋次郎の口許のアップ。さすがにこのあたりは合成はない。紋次郎の顔のパーツとして私が一番心惹かれるのは、楊枝をくわえた口許である。端正な引き締まった口許の線が非常に美しいので、このシーンはかなりの高得点である。
合羽を翻したり敵と戦うシーンにかぶせて、なぜかサイケデリックなアニメーションの蝶が舞う。
最後はあっと驚く趣向が待っている。

新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

オープニングと同じように向こうから歩いてくるのだが、奥に見えるのは花札の山と満月の絵。景色の中に虚像が組み込まれている。(景色も合成であろうが)
一本道を独り歩く紋次郎が、合羽を翻しさっと片膝をついてしゃがみ込む。この動きのスムーズさは、やはり長年紋次郎を経験していないとできないかっこよさである。
「う~ん、終わった~」と、わかったようなわからないような余韻に浸ろうと思った瞬間、水面に映る満月に楊枝が走り、水中から錦鯉がピョンと飛び出す。それもご丁寧に効果音までつけて……。
せっかく紋次郎の最後の決めポーズで、納得しようと思ったのにやはり?が飛び出して終わる。

私の頭の中は、かなり混乱してしまった。
しかし大林監督は映像作りを楽しんだだろうなあと思う。あらゆるものを詰め込んだ、コラージュ的な芸術作品である。
ちなみにタイトルロール制作費が1000万円、撮影現場は妙義山山中、最後の錦鯉は5万円だそうだ。
個性的なものであるが故に、好き嫌いは激しかっただろう。特に昔の紋次郎を知っているファンにとっては、複雑な想いであったことは事実である。私もその一人だった。

初めと終わりだけは、紋次郎がこちらに歩いてくるというオマージュ。
しかし、伝説的な市川監督のタイトルロールの風情とは全く違った映像に、「新……」にかける意気込みやこだわりが凝縮されているのは確かだ。

当時はあまりにも人工的な映像にとまどったが、今こうしてDVDで何度か見ていると、見方も変わってきた。
わからないことが多いだけに、色々とイマジネーションが広がる。
このタイトルロールは、紋次郎の心象風景、もしくは深層心理。映像は虚像であり、夢の中の世界である。しかし所詮この世も仮の宿。儚く消える夢と同じなのかもしれない、などと哲学的に、また仏教的に考えたりもする。これも歳を重ねた見方だろう。

「新木枯し紋次郎」は、驚くべきタイトルロールの変貌という仁義をきった。

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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

お邪魔いたしやす。

さすがに初めて見た時は度肝を抜かれました。
そして笑ってしまいました。
が、だんだん見慣れてくるとコレもありかなと。
慣れとはおそろしい。
私は焼けた道を歩くシーンが好きです。
これから果てしなく続くであろう修羅の道の感じ。

Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

桐風庵さま、コメントをいただきありがとうございます。

本当に衝撃的な映像ばかりでしたね。
前シリーズより紋次郎サンのアップが多かったので、その点は良かったかナと……。

主題歌も随分趣が変わりましたが、最近気づいたら口ずさんでいる自分がいたり……。

やはりどんなに変わろうと、私は紋次郎サンが好きなんだなあ、と再認識しています。

  • 20100908
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

お早うさんです。
全タイトル見ていたわけでも、しっかり覚えていたわけでもないですが、
当時は素晴らしい映像を作る時間も技術も、そして予算もあったんですね。

私もあの口元、好きでした。文句なしにかっこよかったですもん。

  • 20100908
  • 阿修羅王 ♦QmhNi1cU
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

阿修羅王さま、コメントをいただきありがとうございます。

当時の職人集団の、仕事にかけるこだわりや意地は、作品のクォリティーとしてしっかり残っています。
言わば作品は、手塩にかけた我が子同然。
作品に対する愛情も、並々ならぬものがあったと思います。
「帰って来た木枯し紋次郎」として、1993年に制作されたことからも、作品にかける愛情が見て取れます。

紋次郎サンの口許のセクシーさは、絶品です!

  • 20100908
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

大林宣彦監督というと顔はぱっと浮かぶんですが、作品は知りません。
確かよくテレビや雑誌には出ていましたね。

しかし、表題の「タイトルロール」は知りませんが、私も持っている木枯らし紋次郎のイメージとは全く違います。

ここまで違う映画作りを中村敦夫氏が演じたんですか?
確かな記憶ではありませんが、やしきたかじん氏の股旅姿、その格好で歌を唄ったののか、見たことがあるような気がします。

これだけ変わってもリメイクとは呼ばないんですね!

Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

小父貴さま、コメントをいただきありがとうございます。

とにかくタイトルに「新」と銘打つだけあって、「過去は振り返りやせん」と言った感じです。

別物とまでは申しませんが、紋次郎に言わせると「あっしには言い訳なんぞござんせん」というところですか。

たかじんは確かに、ぎこちない台詞回しで出演したことはありました。
メガネをかけたまま撮影に出て行って、周囲が呆れ返ったとか……。
彼もテンパッていたんですねぇ。

  • 20100913
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

お夕さん、こんばんわ。
ご無沙汰すみません。
一応読んでないとこからざっと読ませて頂きました。
木枯し紋次郎の最終回、残念ながらまったく覚えていませんでしたが、あらかんさんが出てらっしゃったんですね。そんな時代だったんだ!

新紋次郎の方は、なぜだかまったく見た記憶がありません。タイトルロールも主題歌も記憶の底にもありません。

4年経ってたとしたら大学の最終学年の頃で、当時は人生に行き詰って最低の頃で(^^;;、テレビどころじゃなかったかもしれません。(^^;;

紋次郎さんのようなすっきりとした強い男が今の日本の中心に居て欲しいですねえ。( ^-^)

これからも続くのね。安心しました。( ^-^)

Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

九子さま、コメントをいただきありがとうございます。

最終回ということで、やはり豪華なゲストでしたね。作品に重みがありました。

新…については賛否両論あるようですが、原作の紋次郎には変わりがないので、今後もボチボチ続けようと思っています。

これからもよろしくお願いしますね。

  • 20100914
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

おはようございます。昨日から『新・・・』が始まりました。これぞ私の6歳の時に悶絶した紋次郎で
あります。このOPはファンの方の中で賛否両論
のようですがはじめこちらを見たものにとっては
紋次郎の全てであり、内なる怒り、焦燥、優しさ
があますことなく詰まったOPなのです・・・

(確かに、角川映画バリのチョウチョが舞うとか
 火山がざっぶーんとかは???でしょうが・・・
 しかしっ!チョウチョの舞うシーンの紋の殺陣の
 かっこよさといったら文句のつけどころ無し。)

子供心に最後の錦鯉がすごく不思議だったのを
覚えています。やっぱり今見ても不思議。

新を観終わって、何年後かにオリジナルを
観ることになるのですが、オリジナルの紋の
若さ、かっこよさに呆然とした思春期前の自分が
懐かしいです。

確かに新の紋は落ち着きといい
流れ者がいかにしてスムーズに生きていくかという
処世術も身につけオリジナルとは違いますが
これはこれでリアルなのではないでしょうか?
もちろん中村氏自身の背景があまりにも
5年のなかで大きく変わったであろうことにも
あるでしょうねぇ。

もしかして新で、離れてしまったファンの方も
いたかもしれないけれど、
お夕姐さんの文章で再度熱くなられることを
確信しております。

  • 20110729
  • おくにゃん ♦-
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

おくにゃんさま、コメントをいただきありがとうございます。

6歳で「新コガモン」に悶絶という早熟さには、畏れ入ります。

「新……」からこの世界に入られ、「無印紋次郎」を後で見られたという方は珍しいと思うのですが……。
また違った観点から、作品の魅力を教えていただけるとうれしいです。

「新……」が始まって、皆さんの反応も気になるところです。
当時は私も懐が深くなく(今でもそうかも)、落胆と愚痴ばかりでしたが、齢を重ねた今、なんとかいいところを探そうとする自分がいます。

私のつたない筆力では、伝えきれないとは思いますが、「継続は力なり」でがんばりたいと思います。

ただ、「新……」だけを見て、これが紋次郎の本質なんだと思われるのは、私としては哀しいものがありますので、ぜひ皆さんには前シリーズ「無印紋次郎」も合わせて見ていただきたいと思っています。

  • 20110729
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

今、BSで新・・・を楽しく見ています。当時は高校生で紋次郎熱もすっかりさめて、リアルタイムでは見ていませんでした。続・・から続き見ましたがこのタイトルロールを見たときは本当にがっかりしてもう見るのをやめようかと思ったほどです。それだけ、だれかが・・・のイメージが強くまして続が終わり次の日すぐでしたので本当に衝撃的でした。^^
自己紹介が遅れましたが、54歳女子^^;中1のとき大好きでテープレコーダーに録音して、台本を作っていて、紋次郎のあとの追跡という新聞記者のドラマの撮影現場に何度か遊びに行ったなつかしい思い出にひたりつつ再放送を毎日楽しく見ております。突然お邪魔いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

papiさま。コメントをいただきありがとうございます。

リアルタイム時は、筋金入りのファンでおられたとお見受け致します。
私は三脚とカメラで、テレビ画面をモノクロ写真に撮っていました。お互い、苦労しましたね(笑)。

「追跡」も好きな番組で、敦夫さんがいつも着用していた男物のサファリジャケットを着たりしていました。(メチャクチャ大きすぎて、爆笑モノのシルエットでしたが)
撮影現場に行かれたんですか?羨ましいです。

またよければ、おいでくださいね。

  • 20140904
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

今年は雨がよく降ります。今日も朝からどしゃぶりです。こんな雨の中思い合羽と笠で大立ち回りをする紋次郎の姿を思い浮かべながら、どんなに大変だったろうかと・・・そして昨日再放送で見た敦夫さん監督の甲州の・・についてのブログをまさにその通りと思いつつ楽しく読ませていただきました。^^
原作が違ってたんですね・・それにしても大谷さんとのシーンでは、年甲斐も無く「あ~いかんやろ・・紋次郎がまさか???」などと独り言 横で旦那がばかやね?な感じで私を見てました!だから一人で見たいのに、なんで今日に限って早く帰ってくる???とまあこんなことはどうでもいいことですが^^;
あのシーンを高校生のときに見てたらどんな感じだったでしょうね^^
ところで追跡のドラマですが・・・ビデオとかお持ちですか??撮影にお邪魔して友達とエキストラでちょっとだけ出ました。何話かも覚えてませんが、なつかしくてもう1度見たいと思っていろいろ探しましたが、見つからず。
C.A.Lにまで問い合わせましたが、相手にされず返事もきませんーー
なにか情報がありましたらお教え願えますか?

Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

papiさま、コメントをいただきありがとうございます。

紋次郎サンが女性に絡まれると、私も「ダメよ、ダメダメ~。」と言った感じでした(笑)。

「追跡」に出演されてたんですか?!敦夫さんにもお会いになったんですか?羨ましい限りです。

「追跡」は曰わく付きのドラマで、途中で急に打ち切られましたよね。当時子どもだった私は、なぜなのかはっきりわかりませんでした。

「汚れた天使」の回をめぐって関西テレビと主演、共演者、スタッフ、俳優座ともめてしまい、この回は差し替え。出演者、スタッフ陣はボイコット……ということで、ドラマシリーズは途中で打ち切り。結果、再放送もなく、お蔵入りになってしまったのだと思います。よって、DVD化も絶望的でしょう。
私も観たいのですが、難しいでしょうね。
当時は、作品にかける情熱や強いイデオロギーを持った人たちが多かったんですね。

あまりお役に立つような情報を持ち合わせておりやせんで、申し訳ござんせん。
またのおいでを、お待ちしておりやす。

  • 20140906
  • お夕 ♦wikz35BA
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  • 編集 ]
Re: 新木枯し紋次郎「タイトルロールの斬新さ」

やはりそうですか・・・・

追跡に出たなんてものじゃありませんよ^^;

スタッフにいきなりそこの家の玄関のとこにたっといて、友達と立ち話してるみたいにしててといわれその横をあのベスパがシューって通ったワンシーンに残念ながら道路側に立った友達がほんの一瞬映っただけです。もう40年以上前の出来事ですが、いまでもその場面だけ鮮明に覚えています。
当時移動のとき乗せていただいたバスの前の座席には小松方正さんがいらして、中2の私たちにちょとエロイ感じではなしかけられたこと、一番まえには敦夫さまの後姿が・・例のサファリジャケット姿で・・
撮影場所のこの家は原田芳雄さんちだとスタッフが教えてくれたり、敦夫様が使用していたショルダーバッグを撮影が終われば2万円で売ってくれるとか、みんな今考えたら本当かうそかは定かではござんせんねえ^^子供だとおもってからかわれたんでしょうね

なつかしい思い出です。
こんなことずいぶんぶりに思い出しました。
みんな紋次郎の再放送のおかげ?ですかね。
つまらねえ話を聞かせやした・・・^^

新紋次郎もあと数回で終わりです。

追跡・・・・・もう2度と見ることができないんでござんすね。ごめんなすって!

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