紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)
*背表紙の右上、ちらりと横顔が見えているのが紋次郎

今頃で申し訳ござんせんが、ブログタイトル「紋次郎気質」について語らせて頂きとうござんす。

紋次郎の映像世界に引き込まれ、中村敦夫氏に惚れ込んだあっしが手にした著書が「渡世人気質(かたぎ)」でござんす。

「渡世人気質」  
中村敦夫著   出版社:ブロンズ社   1972年発刊

お気づきの通りこのタイトル名から「紋次郎気質(かたぎ)」となりやした。
紋次郎関係の本が散逸してしまった中、この本は35年以上、ひっそりと本棚の奥で眠っておりやした。

さてこの本に関する記事を、私が尊敬してやまない「花風鈴さま」から光栄にも頼まれやして、書かせて頂いたのが以下のものでござんす。

花風鈴さんのブログ
『上州無宿我紋次郎』
http://blogs.yahoo.co.jp/hirosigerubi3

*****************************
お控えなすって、お控えなすって、早速のお控えありがとうさんにござんす。
手前、訳あって36年ぶりに草鞋を履くことになりやした「お夕」という駆け出し者でござんす。諸国の名だたる親分衆の足下には遠く及ばねぇ、修行半ばの半端者でござんすが、万端よろしくお頼み申しやす。

あっし、渡世の道に入りやしたのが13のガキの頃でござんして、「木枯し紋次郎」という滅法渋い兄貴に出会ってからでござんす。
最初の出会いは、どの回だったか定かではござんせんが、多分3話か4話かと思いやす。それまでは裏番組の「お荷物・小荷物」を観ておりやした。あっしより一つ年下の従姉妹から「面白い番組がありやすぜ。」と教えてもらい、それからでござんすねぇ。(あっしの従姉妹も、その歳で観てたなんてねぇ)

何にそんなに惹かれたかと尋ねられやしても、うまく答えられねぇんでござんすが、一言で言いやすと「とにかくカッコいい!!」に尽きやす。13歳のガキでござんすから、惚れたはれたということも解っちゃおりやせん。それまでは、テレビの俳優やタレントを見やしても興味がわくことがなかったんで、急に流行病(はやりやまい)にでもかかったようなもんでござんしょうねぇ。
紋次郎兄貴のリアルな姿形のカッコよさ、(白塗り、不自然なカツラ、小綺麗な着物が普通でござんしたから)セリフの言い回しと低く響く声、ニヒルな性格、ロケ地の映像美、ストーリーの意外性……。全てをひっくるめて、この番組に惚れ込んでおりやした。
当時は30過ぎの大人の男にぞっこんだなどと、周囲の兄弟分には言えやせんでした。当然、そんじょそこらの洟垂れ坊主には全く魅力を感じねぇんで、兄弟分達からは「男嫌いのお夕」と思われておりやした。

毎日が寝ても覚めても紋次郎兄貴のことばかり……。そんな中で手にしやしたのが、中村敦夫著 「渡世人気質」でござんした。

なんせ年端もいかねぇ13の頃でござんすので、書面の中身が難しく、ほとんどわからねぇという情けねぇ有様でござんした。異国の言葉がカタカナで書かれておりやすんで
(「トリップ」「マリファナ」「ドラッグ」「アナーキー」「LSD」等々)何とか解読しようと致しやしたが、スペルがわからねぇ、まして意味などちんぷんかんぷん。
「ターヘル・アナトミア」を手にした杉田玄白状態でござんした。

書面に出てくる「ノーマン・メイラー」っていう作家の書物を探し、田舎の本屋でウロウロした記憶もござんす。
(多分「鹿の園」を購入したところで、読めたもんじゃござんせんでしょうが)
しかし敦夫兄貴の書物を手にしたというだけで、有頂天でござんした。
ホントにお目出たいヤツでござんすねえ。

そうそう、本屋といやぁ、あっし、小銭が貯まると銭を握りしめて単行本を買いに行っておりやしたんですが、「木枯し紋次郎」が最終回になるってんで、(新聞広告に出ていたんでござんす)慌てて「小説現代」(紋次郎が毎月掲載されていた)を買いに行き、本屋の婆さんに胡散臭く見られたことを思い出しやした。
その婆さんはこう言いやしたね。
「えらいねぇ、おとっつぁんのお使いかい?」

「小説現代」を、中学生は普通、買いに行きやせんからねぇ。
(紋次郎の単行本を買うのも変でござんしょうが)
あん時は確か「唄を数えた鳴神峠」でござんしたねぇ。読み終わってからの喪失感は、今でもはっきり覚えておりやす。(結局最終回ではなかったんでござんすが)
もう、紋次郎の兄貴には会えねぇんだと思いやすと、悲しくて悲しくてなりやせんでした。

いけねぇ、いけねぇ。ちょいと寄り道をしてしまいやした。「渡世人気質」に戻りやす。
まず気に入りやしたのが、表紙の写真でござんす。言わずと知れた「地蔵峠の雨に消える」でござんすが、この中でどの渡世人が(5人おりやす)紋次郎兄貴かとずっと心に引っかかっておりやしたが、最近DVDで確認した結果、やっとわかりやした。あっしが目をつけておりやした御仁が、思っていた通り兄貴でござんした。
これで枕を高くして眠れるってもんでござんす。ホッと致しやした。

実は、兄貴の書いたエッセイ「御免なすって」が一番読みたかったんでござんす。
全部で20話、どれも渡世人言葉で書かれておりやして、あっし、これには痺れやしたねぇ。
ここに書かれておりやすことは、全て36年経った今の世の中にも、通ずるものばかり……
この渡世は、このぐれぇのスパンでは何も変わらねぇのかもしれやせん。
どれも軽く書かれているようでござんすが、テーマの本質は結構重いもんで、既成価値にとらわれねぇ反体制の精神が、どのページにも現れておりやす。
この渡世、何でも疑ってかからねぇといけねぇんだなあと知りやした。
いくつか気になるところを取り出しやす。

日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

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【楊子を吹くと饅頭が売れる】
『…日本が大統領制で直接選挙でもやれば、栄作だんなよりはテレビに強いあっしが 立候補して、かっぱをひらひらさせながらの遊説が成功し、政権を担当するってなことに…』

  * まさか本当に遊説する身になろうとはねぇ。

【みーんな滅ぶのです】
『…あっしの嫌いなもの 青ネギ、玉ネギ、ニラ、ラッキョ、役人。
 この野郎、カンキョーチョーとかいういかがわしい役所に勤めているとかで…』

 * 敦夫兄貴は2001年、環境委員会に草鞋を脱ぎやすが、この時から既に環境問題には目をつけておりやしたようでござんす。今も役人はお嫌いなんでござんしょうねぇ。

【あっしの惚れた女たち】
『…そういやあ、世間で良く言われる「女らしさ」と言う言葉ほど、嘘くさいものはござんせん。男の関心を引くためにベタベタと化粧をこらし、反抗的な表情を押さえ、進んでお茶を入れに台所へ走り込む…これがせいぜい「女らしさ」の実体でござんす。』

 * あっしはそういう女にはならねぇと、心に誓いやしたねぇ。しかし上記のような女が、モテるんでござんすよ、今のご時世でも。

【モンジロー語を国語に?】
『ある意志を伝えるのに、日本語ほどあいまいで、非論理的な言語はねえように思えます が、そのくせ、上下、老若、男女の対立関係では、信じられねえほど精妙な規則に縛られているようでござんす。』
『…平等な言語を獲得するためにゃ、この国全部を占拠しなきゃならねえってことになり やすね。それがいやなら、国語を「あっし」「ござんす」ことばに統一してみりゃどうでござんしょう。』

 * あっし、諸手を挙げて同意いたしやす。
******************************

30を過ぎたばかりであるのに、自分の立つ位置がしっかりしている兄貴だからこそ、演技だけでは表せねぇ、あの紋次郎の風情が出せたんじゃねぇかと思いやす。
このエッセイを読んだだけで、兄貴の心意気がわかるってもんで……。
大した御仁だと子ども心にも思いやしたねえ。
(後編に続く)

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Re: 日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

へ~~~~~っ!!!
13歳のお夕さんが、こうして紋次郎に出会ったわけですね。
人との出会いが、人生に大きくかかわってきますが、
これだけ惚れぬかれた紋次郎も幸せなものです。
お夕さんがタイムトンネルで紋次郎に会ったとしたら・・・
歴史にたらはないと言いますが、サインももらえず
例え「あっしには、かかわりのないことでござんす」と
無視されようともお夕さんは痺れそうですね。

人生そのものも邂逅ですよね。
これだけ打ち込めるものと出会えたお夕さんってうらやましいです。

私もせっかく生を受けたんんだから、何か見つけたいですね。
どうも浮気ものはいけません。
すぐに飽きてしまいます(笑)

Re: 日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

私も中一の終わり、13歳にして紋次郎と出会いました。
同い年なんですね。

私は両親が大の時代劇ファンだったおかげで、第一回から見ることができました。
まず主題歌が、当時は「テレビでは絶対に聴けない」とされていたフォークだったことに驚きでした。
またその歌詞も、「心は昔死んだ」と斬新。
また、「あっしにはかかわりのねえこって」という、これまでの時代劇とはまったく違う主人公。

そして紋次郎の服装。
汚れた服の主人公はそれまで有りませんでした。
これまでの他の時代劇の旅人の、合羽や三度笠が真新しいのがなんか嘘っぽく思えてきました。
また、室内でも破れた障子、汚れた壁、と、本当に生活臭を感じました。

大袈裟かも知れませんが、それまで綺麗な服を着た紳士淑女を描いた絵しか見たことのなかった19世紀の人々が、写実主義のギュスターヴ・クールベの絵を見た感動も、このようなものだったのではとも思います。

もう鷲掴みにされ、私もすぐに原作小説を全て買い揃えました。
が、ここにお夕さんの書かれている「渡世人気質」は、本屋で見かけたものの、守備範囲が違うと買わなかったのです。

お夕さんは13歳の少女だったので、中村敦夫関連を集められたのですね。
私は、「大人になるなら、かっこいい大人になりたい」と願う13歳の少年だったので、グッズよりも、自分が真似することから入りました。
喋り方や歩き方を真似、挙句には自分で楊枝を作って咥えたり。
(楊枝はいくら頑張っても飛びませんでしたが)

もし私が紋次郎と出会ったのが、価値観もある程度固まった20歳以降だったら、今のようにのめりこんだのかと思います。

「紋次郎に会いたい」と夢見る少女ファン。
「紋次郎になりたい」と夢見る少年ファン。
このあたりの違いが、40年近く経った今も尾を引いているのが面白いですね。

  • 20101025
  • TOKI ♦nhNJg39g
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

13歳でここまで長く深く
のめりこめる対象に出逢えたお夕さま。

羨ましい!
自分の人生にずーーーっと寄り添ってくれるような
存在があるのはステキですね。

それにしても渋好みです。

  • 20101025
  • ナラリーノ ♦SJMMuUIM
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

小父貴さま、コメントをいただきありがとうございます。

思えば13歳から、あまり精神年齢が発達していないのかもしれません。

長年生きて参りましたが、紋次郎以上の男性像はやはり見つかりません。(いるはずないですね)
フィクションではありますが、私の恋心の中では未だに大部分を占めております。

恋の病は重症です(笑)。

  • 20101025
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

TOKIさま、コメントをいただきありがとうございます。

13歳の紋次郎風TOKIさまに、会いたかったです(笑)。
今でもきっと、紋次郎の風情を漂わせていらっしゃると思います。

ホントに、何もかもがかっこよかったですね。
私は真似はできませんでしたが、当時はかなりの早足で歩いておりました。
が、所詮コンパスも短く上背もなく、コマネズミのようにしか見えなかったでしょうね。

紋次郎の作品は一見暗く、陰気な印象でしょうが、枯れて物寂しいロケ風景の美しさには、胸が締めつけられる想いでした。
この感覚は今でも同じです。
風光明媚な景色に対する想いとは、全く違います。
未だに、そういう風景を探している自分がいます。

  • 20101025
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「『紋次郎気質』の訳」(前編)

ナラリーノさま、コメントをいただきありがとうございます。

紋次郎の作品に逢えたことは、私の人生にどんな影響を及ぼしたか……。

どうなんでしょうねぇ。

答えは出ませんが、人格は紋次郎とは似ても似つかないのは確かです(笑)。

いえ、真逆なのかもしれません。
だから惹かれるんでしょうかね。

渋い女になりたいです……。

  • 20101025
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
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