紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

Articles

日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」
兄貴の食事法は皆さんご存知のように、麦飯に干し魚をのせ汁をぶっかけて一気に流し込む、いわゆる「紋次郎食い」でござんす。これは煮売屋や一膳飯屋でのこと。
野宿するときは何を取り出しているか……。
携帯食でござんす。

よく出てくるのは干し芋でござんしょうか。今も干し芋はよくお目にかかりやすが、昔の物は今よりずっと堅かったようでござんす。保存食ということで、より乾燥に重きを置いたんでござんしょう。

記念すべきシリーズの初回「赦免花は散った」で、三宅島を島抜けした紋次郎兄貴は、上陸してすぐ日野宿を目指しやす。その途中、川の水を飲み、最後の食糧として三宅島から持ってきた芋のキリボシを囓っただけで、道中を急ぎやす。

「海鳴りに運命を聞いた」の原作で、紋次郎兄貴が廃屋の中、干し芋を食べる様子が描かれておりやす。

「紋次郎は、土間の突き当たりまで行って、そこに脱いだ道中合羽を広げた。長脇差を鞘ごと、腰から抜き取った。懐中から、手拭いを取り出した。手拭いの間に、干した芋が五キレほどはさんである。そのうちから三キレを掌へ移すと、手拭いを元通りにして懐へ入れた。
 紋次郎は柱に凭れかかって、干し芋を囓った。時間をかけて、丹念に噛んだ。唾液を、誘い出すためだった。」

飯屋で食べるときは、一気に流し込みやすが、野宿のときはゆっくり時間をかけて腹に収めやす。よく咀嚼して唾液を出すことで満腹感が増すということでござんしょう。
空腹であっても五キレを全部たいらげず、二キレ残すというところも、今までの長旅の経験から身につけた備えなんでござんしょうねえ。

日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

「笛の流れは三度まで」では、自分もひもじいのに、一切れの干し芋を女郎のお玉に渡しやす。兄貴の優しさに感じ入りやす。

他には豆餅もござんす。「賽を二度振る急ぎ旅」では猿回しの弥助が差し出す握り飯を断って、昼間食べ残した豆餅を一枚懐中から取り出しやす。この昼間食べ残した……というあたり、紋次郎兄貴らしいところでござんす。

干し魚を囓るというのもござんした。テレビ版での「年に一度の……」では、名主の家の前でお千が出てくるのを干し魚を囓りながら待つシーンがござんした。貧農に生まれた兄貴でござんすので、粗食には慣れているとはいえ、よくぞあれだけの量で持ちこたえられると感心してしまいやす。

現地調達としては、川魚を捕るというのもござんした。(テレビ版では魚に楊枝を飛ばしておりやした)空腹でフラフラになったとき、清坊が差し出した野葡萄をむさぼり食う「夜泣石は霧に濡れた」も現地調達の部類でござんしょうか。

今と違い、宿場を外れると食べ物を売る店などなかなか見つけられやせん。
食べられるときに食べておく。調達できるときに確保する。先のことを考えて残しておく。
紋次郎兄貴の長旅における知恵なんでござんすねえ。

手を伸ばせば食べる物にすぐ届く、あっしのような生活をしている者には、到底真似できねえ修行のような旅でござんす。
「旅立ちは三日後に」のタイトルの前に、「あの世への」が付きそうでござんす。
空腹では三日も保ちやせんからねえ。

しょぼい話で一年を締めくくる無粋をお許しくだせえ。

ご一同様、この一年のご厚情に感謝申し上げやす。
よいお年をお迎えくだせえ。

御免なすって。

トラックバックURL

http://kogarashi1940.blog10.fc2.com/tb.php/126-6f02294c

この記事へのトラックバック

この記事へのコメント

Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

「武士は食わねど高楊枝」なんてフレーズもありますが、紋次郎の食生活はわびしいものだったんですね。

もっとも民百姓の一般もこんな感じだったかも知れませんね。
それなのに物凄い太刀さばき!どこからその気力やエレルギーが出てきたんでしょう?

Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

小父貴さま、コメントをいただきありがとうございます。

仰るとおり紋次郎サンの食生活は貧しいものでした。
天保の大飢饉の最中でしたから、農民は凶作と年貢の取り立てに苦しめられた時代です。
一宿一飯でも、なかなか白米が出せなかった親分もいたようで、沽券にかかわる大問題だったと思います。

紋次郎サンの体脂肪率は、どの位だったのでしょうね。

  • 20101228
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

 お久しぶりです。

 紋次郎さんの食糧事情についてはぼくも興味のあるところでした。同じ市川崑監督の『股旅』という作品のなかで、一宿一飯の場面が出てきますが、一番最初に登場した食べ物は雑穀のお粥か雑炊のようなものだったと記憶しています。その後は、麦飯だったでしょうか。

 いずれにしても当時の食糧事情はお世辞にもよかったとはいえなかったようですね。天保10年10月2日のとある武士の食事についての日記が残っています。それによると、「朝は粥、昼は茶漬け、晩に飯炊き汁いたし申候」と、あります。ほかにもお茶漬けだけではなく、湯漬けや、紋次郎風に味噌汁の残りをかけて食べることもあったようです。

 下級武士といっても一応、定収入と定住所があるお侍ですら日常の食生活ではこの程度ですから、無宿人の食生活は、推して知るべしです。原作のなかに、無宿人は口に入るものならどんなものでも食べる心構えがないと生きていけないみたいな記述があったと思います。

 書いてあるのを読むとさらりと流してしまいそうですが、これ凄いですね(笑)。現代人の及ぶ境地ではありません。しかし、ほんの百年ちょっと前までの日本人の食生活というのはおしなべてこの程度だったということはすごいと思います。

Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

しょぼいことなんかないっす!^^

大自然の中から工夫したり、苦労して食いつなぐんですね・・・。
「旬のもの」は一番のごちそうだと思います。
そういった、その時期にしか食べられないもので
彼は特別なエネルギーを得ていらっしゃったんですね、きっと。

今年はいつもいつもありがとうございました。
また来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
これからも気をつけて「旅」をしてくださいね。

  • 20101229
  • てのりぱんだ ♦C/Rcg83E
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

紋次郎は、豆餅をも生で齧ったりしてましたね。
紋次郎喰いは真似しましたが、これはちょっと真似できません。(笑)

乾物を生食するわけですから、相当喉が渇くと思います。
原作小説には水筒は出てきませんが、「海鳴り」のTV版で、竹の水筒を取り出してましたね。

現地調達、「顔役の養女」ではフナを、「明日も無宿の次男坊」ではイワナに似た魚を楊枝でしとめてましたな。
また「次男坊」によると、キノコ採集もやるみたいですね。

紋次郎は一日歩き続けるわけですから、消費カロリーも相当なものです。
それを干し芋や豆餅でやっていけたのか、ということですが、ここに興味深いことが書かれています。
この二段目右の「リサーチ報告」をクリックして、1998/02/08「今、我々の体内で何かが起きている!」です。
http://www.ntv.co.jp/FERC/

  • 20101229
  • TOKI ♦nhNJg39g
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

le_gitanさま、コメントをいただきありがとうございます。

「股旅」の時代考証は、しっかりしていますね。
食いっぱぐれの貧しい農民のなれの果て……。
当時の、無宿渡世人の真実を表しているように思います。
渡世人と言っても、お旦那博奕くずれのそれとは大違いですよね。

下級武士でもそのぐらいなんですね。
勉強になります。
今、毎日食している白米ですが、当時の農民たちにとっては腹一杯食べることが夢だったんでしょうね。

紋次郎サンに、白米のおにぎりを作ってさし上げ、お腹いっぱい食べさせてあげたいです(笑)。

  • 20101229
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

ぱんださま、コメントをいただきありがとうございます。

原作に出てくる料理や食品は、どれも粗食ではありますが、中には食べたい物もあります。
「麦飯にとろろかけ」なんかは、食べたいですね。「丸子宿」での名物です。
紋次郎サンの影響で、「干し芋」は私の好物になりました。

紋次郎サンにとっては、味わうというより、空腹を満たすだけの食物だったでしょうが、空腹こそが一番何でもおいしく食する秘訣かもしれませんね。

ぱんださんには、いろいろと癒しのお言葉をいただきありがとうございました。
こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします。

  • 20101229
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

TOKIさま、コメントをいただきありがとうございます。

食に関するネタだけでも、結構ありますね。
いつもヒントをいただき、ありがとうございます。

キノコは、知識がないと危ないでしょうね。間違えて食べると命取りです。
(ブッダもキノコ料理で命を落としたという説もあるくらいですから……)

「リサーチ報告」の情報、ありがとうございます。
現代人と昔の人との腸内では、随分違う環境なんですね。
乳酸菌については、昔で言えば「漬物」に多く含まれているようです。
樋口 清之著の「梅干しと日本刀」を読みますと、昔の食生活も捨てたモンじゃないと思うようになりました。
粗食より飽食の方が命を縮めそうです。

皆様、年末年始と暴飲暴食の時期でございますので、くれぐれもお気をつけください。
(お前が一番心配や!という突っ込みが幻聴として聞こえてきますが)

  • 20101229
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

こんばんは♪

いよいよ、大晦日(おおつごもり)ですね。
今年は思わぬ出会いに感謝しております。
拙ブログにもご来訪いただきまして、有難うございました。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。
来る新年が「お夕さん」にとって、良い年でありますように。

では、又♪

  • 20101231
  • ぶんぶん ♦KWOxclv.
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

興味深いですねー。
お夕さんの鋭い観察眼と表現力にはいつも、感心してしまいます。
今年もいろいろお世話になりました。
良いお年をお迎えください!
来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

  • 20101231
  • ちゃーすけ ♦NmRVQg7I
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

ぶんぶんさま、コメントをいただきありがとうございます。

ご縁ができたこと、うれしく思っています。
また宿場や峠、書籍についてお教えくださいね。

来年もよろしくおつきあいください。

  • 20101231
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

こんばんは。
こうして再び読み返すと、実際に紋次郎が生きていたように思えます。
不思議ですね。

この中で紋次郎はどんなお正月を迎えるんでしょうね。
お夕さんもよいお年をお迎え下さい。
また来年も、どうかよろしくお願いします。

  • 20101231
  • 阿修羅王 ♦QmhNi1cU
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

ちゃーすけさま、コメントをいただきありがとうございます。

ちゃーすけさんのように、的確にレビューが書ければいいのですが……勉強させていただきます。
またお邪魔しますが、よろしくお願いいたしますね。

来年もちゃーすけさんにとって、ステキな年になりますように……。

  • 20101231
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「紋次郎兄貴の携帯食」

阿修羅王さま、コメントをいただきありがとうございます。

こちらは今日が初雪でした。今もしんしんと降っています。

紋次郎サンはこんな雪の中でも、旅を続けたんでしょうね。
昨日の続きが今日というだけですから、正月という感慨もなく……。
切ないです。

阿修羅さんの撮影センスには全く及びませんが、がんばりたいと思います。

来年もよろしくお願いします。

  • 20101231
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
コメント投稿フォーム

管理者にだけ表示を許可する

Paging Navigation

Navigations, etc.

About This Website

/