紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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第8話「念仏は五度まで」(前編)

第8話「念仏は五度まで」(前編)

第8話「念仏は五度まで」(前編)
(原作 第34話)(放映 1977.11.23)
オープニングは死骸の取り調べから始まる。死骸の身元は、台ヶ原の増田屋のあるじ忠七だという。増田屋は大きな茶屋で、「六兵衛の蕎麦饅頭」をよく売る店である。
刃物で背中から一突きされたのが致命傷だが、首筋に細い物で突き刺したような傷跡がある。
群衆の中のひとりが「流れ渡世人で楊枝を飛ばす木枯し紋次郎が、甲州路を西に向かった」という情報を役人に話す。
楊枝をくわえているが故の「濡れ衣シリーズ」。今までも何回かあったが、傷跡から間違われるのは初めてだろう。

今回の流れ渡世人は盲目で子連れという設定である。盲目と言えば前シリーズ「獣道に涙を棄てた」のお鈴以来である。
「子連れ狼」と「座頭市」をミックスした感じである。

盲目の渡世人、信州無宿、一ノ沢の彦三郎役に長谷川明男さん。
長谷川さんといえばいわゆる紋次郎シリーズの常連さんである。前シリーズでは「湯煙に……」「雪燈籠に……」
に出演されているので今回で三作目である。前作はどれもあまり腕が立つ役ではなかったが、今回はどうか。

道ばたで彦三郎とその倅、友吉が談笑している。この二人は友吉の母を捜している。友吉は母の顔を知らないし、彦三郎は盲目のため顔を見分けられない。しかし彦三郎は声を聞けばわかるという。
宿場の茶屋で蕎麦饅頭を頬張る友吉。彦三郎は店の女に「お縫という女を知らないか?」と尋ねる。捜している女の名は「お縫」という。
友吉はなかなか鼻っ柱の強そうな子で、「無縁仏に……」の一太郎を彷彿とさせる。

この近辺は「茅野の徳蔵」という貸元の縄張りで、徳蔵は「二足草鞋」という設定になっているが、これはテレビ版だけ。原作は三十をすぎたばかりの若造で「二足草鞋」ではない。
徳蔵は、下手人としての紋次郎を殺し、名を上げたいと子分たちにハッパをかけているが、どうも心許ない。
徳蔵は「六兵衛の旦那のところに相談に行く」と子分たちに話をしている。

居酒屋では、店の親爺と増田屋殺しの噂をする男が一人。和泉屋の主人らしい。
店の親爺は「下手人は木枯し紋次郎らしい」と言っているので、噂はかなり広がっている。

和泉屋友右衛門も増田屋と同じく、大きな茶屋を営んでいる。
この友右衛門に店の親爺は「六兵衛さんの若い後添えと、いい仲なんじゃないか」と冗談ごかしに話している。友右衛門は商売上世話になっているだけだと、慌てて言うが怪しい。
六兵衛は高齢で心の臓を病んでいて伏せっているらしい。若おかみは商用で、鰍沢まで名代で出かけているとも話す。

またしても「六兵衛」の名前が口にのぼる。忠七、徳蔵、友右衛門に共通するのは「六兵衛」であるのだ。

店を出たとたん友右衛門は誰かに殺される。チラリと逃げていく影を見た居酒屋の親爺は呟く。
「木枯し紋次郎……」

紋次郎と彦三郎親子との出会いは、原作とテレビ版では違う。
原作では、紋次郎が河原にいる時にこの親子がやって来る。彦三郎は挨拶をしてお縫という自分の女房を捜していることを話す。
友吉が二歳になったとき、お縫は消えた。自分は目を患っていて動きがとれなかったが、友吉とお縫を捜し始めて2年になるという。そしてすでにお縫が消えて5年半。お縫を捜し出すことが自分の残されたたった一つの生き甲斐だとも言う。

テレビ版での出会いは賭場。彦三郎が人一倍研ぎ澄まされた聴力でいかさま博奕を見破る。騒然となったとき、紋次郎は咄嗟に楊枝を飛ばして、ろうそくの火を消す。
暗闇の混乱の中、紋次郎は彦三郎親子を逃がすため、いかさま連中を痛めつけている。この時点で紋次郎は、彦三郎親子に情をかけている。

「大丈夫。ここまでは、追ってこねえでしょう。」

たどり着いた破れ堂宇の戸を閉めて、紋次郎は彦三郎親子に声をかける。この声のかけ方も、随分親しみが込められている。
紋次郎は彦三郎から話を聞かされる。彦三郎の身の上話は原作とほとんど同じである。
友吉の口から「縫ってのはおいらのおっかあなんだ。」という言葉が出たときだけ、紋次郎の表情が変わる。
板壁にもたれて腰を下ろしている紋次郎だが、しまいには話の途中で眠ってしまっている。

第8話「念仏は五度まで」(前編)

この破れ堂宇の中での照明はすばらしい。
照明は「山下礼二郎さん」。前シリーズから、特に第2シーズンはほとんど山下さんが照明を担当されている。
月光が堂宇の隙間から入り込み、板張りの床を照らしている。その光は斑紋となって、薄暗い室内に儚く浮かび上がる。光と影を意識した効果である。
夜が明けて今度は早朝の陽の光。一目で朝日だとわかる色調と射し込む角度。計算し尽くした照明の妙である。

普通渡世人は長ドスを抱き寝するのだが、彦三郎は友吉を抱き寝している。苦楽を共にする、父子の情愛を感じる。
眠っている二人を後にして、そっと出て行く紋次郎。朝霧が流れる川で顔を洗っているところに友吉がやって来る。

「もう行っちまうのかい?せっかく知り合いになれたのに……」
「達者でな。」
「紋次郎さん、手配書が回ってるぜ、気をつけてな。」
「必ずおっかさんを見つけろよ。」
「うん。」

今回のテレビ版紋次郎は、いつになく優しい言葉をかけている。友吉に感情移入しているようである。
原作の紋次郎は友吉とは口をきいていない。

蕎麦饅頭で財を成した六兵衛の説明がナレーションされ、立派なお屋敷や蔵が映る。伏せっているのは65歳の六兵衛でその傍らに茅野の徳蔵が座る。
六兵衛はお得意様の増田屋や和泉屋が次々に殺されるのは、江戸の商売敵の仕業かも知れない。下手人の木枯し紋次郎を早く捕まえろ、と徳蔵に指示を出す。
徳蔵は六兵衛に「おかみさんはまだお帰りでは?」と尋ねる。六兵衛は天井に向けていた視線を徳蔵の方に向ける。その目は皮肉がこめられたように見える。

「気に掛けてくれて、ありがとう。お藤は無事に帰って来るさ、明日にもね」

意味深長な雰囲気ではある。
テレビ版では六兵衛と徳蔵との会話は記述されていない。

そこへ徳蔵の子分が紋次郎の目撃談を知らせに来る。徳蔵たちは六兵衛の屋敷を後にする。
一方紋次郎は上諏訪に向かっている。その行く手を遮ったのは友吉。

このまま上諏訪に行くのは危ない。目明かしの徳蔵が待ち伏せている。
茶屋で徳蔵の子分が話しているのを父親の彦三朗が聞いた。その父から知らせに行け、と言われて来たと言うのだ。

「おめえ、それを言うためにここまで走ってきたのかい」
「おいら紋次郎さん、好きなんだもん」
「ありがとうよ、恩に着るぜ」

と先を行こうとする紋次郎に、後ろから徳蔵一家の追っ手がやってくる。

「どいておくんなはい、あっしはおめえさんたちと争う理由は何一つござんせんよ」

しかし子分たちは襲いかかってくる。紋次郎は長ドスは抜かず鞘に収めたままで3人を打ちのめすと、街道を走っていく。

友吉は草むらから姿を見せ、紋次郎が一瞬で3人を倒したことに感嘆する。
「強ぇ……」
紋次郎の真似をして口には笹竹を咥えている。友吉は紋次郎に憧れを持つ。

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