紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「簡素なる国」を目指して

日々紋次郎「簡素なる国」を目指して

日々紋次郎「簡素なる国」を目指して
あまりにもタイムリーすぎて、出版までの経緯を知らない人にとっては、「ああ、またタレントが機を狙ってバタバタと書いた本か……」としか感じない人がいるかもしれません。
私は大きな声で叫びたい。
答えは「否!」。

中村氏は2007~2009年の3年間、同志社大学の大学院で「市民社会論」の講義を続けてこられました。
本書はその講義録を加筆、修正したもので、決して故意に3月11日の大地震とリンクしたものではありません。
しかし中村氏は、この偶然性に少なからず躊躇したとある番組で述べています。

表紙の帯の言葉。
「日本人よ!今こそ強欲から『少欲知足』へ  震災と原発事故のあとを考える」
このあたりはやはり、目にするとドキッとします。

かなり分厚い書籍ですが、ページを繰ってみてホッとします。文字が大きい(笑)。
大きいのは文字だけでなく視点も大きく、順序立ててわかりやすく書かれています。
読みやすいのはありがたいものです。

始業チャイムと題されるプロローグ部分に、震災と原発のことが少し書かれています。
脱稿されたのが3月23日ですから、あの日から約10日後です。(この日は私のバースデーでしたので、ちょっとウレシイ!)

目次は全部講義風に、第一時限から第十四時限まであり、近代社会の経済暴走とその歪み、目の前にある危機からどういう観点を持って脱出すべきかが、系統的に記述されています。

中村氏は近代社会の閉塞状態を「四つの壁」として捉えています。まるで「四面楚歌」です。

第一の壁「戦乱の拡大」
第二の壁「環境破壊」
第三の壁「人口爆発」
第四の壁「近代経済の崩壊」

どの壁も突破するには、相当な時間と覚悟が必要ですし、問題が地球規模的にグローバル。
壁は分厚く高く、どこまでも果てがなさそうに見えます。

しかし「蟻の一穴」ではありませんが、どんな小さなことでも何か突破口があるはずです。
この本はそのヒントとなることが、たくさん提示されています。

興味を持ったところは「仏教経済学」。
ドイツ生まれで英国へ帰化した経済学者で実業家でもある「エルンスト・フリードリッヒ・シューマッハー」が提唱したものです。
彼は1911年に生まれ、英国に留学してあのケインズの政経クラブに入り、後に経済学の研究や評論が高くケインズに評価されます。
しかし後半生になってガンジーの思想やビルマでの仏教社会にふれ、ケインズ理論に決別します。
そして「仏教経済学」や「中間技術」という造語を提唱し、世界各国で講演活動をし、『スモール・イズ・ビューティフル』を1973年に発刊します。

ここで出てくる仏教用語が『少欲知足』です。
人間の欲は限りがありません。貪欲と競争で明け暮れる者には、精神的な充足は得られません。
資源は有限であり、経済成長も有限……それどころか環境破壊というマイナスまで背負ってしまっていることに人々は気づかず、豊かな生活が幸福に繋がると信じて突き進んでしまいました。

『豊かな生活』とは何を指しているのかを、もう一度私たちは考え直さないといけないと思います。

消費が経済を動かし美徳とされ、いつの間にかそれが浪費となり、その放漫な生活が日常になってしまいました。
「大きいことはいいことだ~♪」とチョコレートのCMが流れていたのは1967~1968年。
そんな世情に逆行し警鐘を鳴らしたのが、今から40年も前だったというのが驚きです。

中村氏のこの著書により、シューマッハーが提唱した『仏教経済学』に再びスポットが当たるのではないでしょうか。

「ローカリズム」「地域主権」についての記述も興味深く読みました。
経済成長を第一義とする「グローバリズム」に対抗する地域主権、「ローカリズム」。

「人間が地域共同体を運営するには、小さければ小さいほどやりやすい。デリケートな部分にも目が届くし、その地の住む人間とていねいに交わりながら進めることができる。~中略~国際とか世界とか
大風呂敷を広げた途端に、現実把握が困難になり、でたらめと無駄、腐敗と差別が幅をきかせるようになるのです。」
(本書より抜粋)
そして運営に重要なものとして、以下の3点をあげています。

○地域の経済的自立  
○食糧の自給自足  
○自然エネルギー利用

どれも頷ける事ばかりですし、これは長じて日本国の将来の指針とも言えます。

「簡素なる国」を目指して

第13時限「食は地産地消」
今やっとこの言葉が市民権を得ましたが、よく考えるとなぜ「地産地消」でなかったかの方が不思議です。
地元で採れたものを地元で食する。当たり前の原理が今まで成されていなかったのです。

本書に給食の話が出てきましたが、子どもたちにとっては米飯の方が好まれています。小麦粉が高騰しているのであれば、無理をしてパンを出さなくてもいいように思います。(ただし揚げパンは子どもの好物)
地産地消が叫ばれるようになってから、郷土食が増えたようですが、子どもたちにとっては家庭であまり食されていないのか、逆に珍しがっているようです。

本書でもチラリと出ました「不耕起栽培」は地元の小学校でも10年前から取り組んでいます。
地元に取り組んでいる団体があるので、タイアップして子どもたちは実施しています。
実に合理的にできていて、循環型の農法です。生態系も保たれていて、田んぼは小さな生物でとても賑やかです。
化学肥料の代わりに米ぬかをまいたり、除草剤の代わりに除草機(人力で転がすと爪が回転する)で草を取ったり……。
次世代につなぎたい学習だなあ、と思っています。(田舎の学校だからできるんですけどね)

効率よく収穫量を増やすことばかりに目を向けてきた風潮がありましたが、最近は少しずつ路線が変わってきたように思います。
日本の農業の将来を、考える子どもたちが増えることを願っています。

最後の章、第十四時限「自然エネルギー」では原発問題に触れています。利権がらみの電力業界の内実を読むと、「クリーンな原発」と謳われてきたことがいかに虚像だったかを思い知らされます。

中村氏は、科学技術の原則として「制御できること」「後始末できること」をあげています。今回の事故で原発は、明らかにこの原則に反していることを大きな被害をもって示しました。
人間は制御できない怪物をつくってしまい、その怪物は暴れ回り、封印したとしてもいつかまた出現するのです。

私は日本の技術力を持ってすれば、原発に頼らず自然エネルギーで十分補えると思っています。今までがあまりにも、消極的過ぎたのです。
日本政府はどのように舵をきるのか……国民はどのように舵をきらせようとするのか。
国民一人一人が漕ぎ手なのですから、しっかり見据えていかないといけないと思います。

「無駄や浪費のない簡素な生活。小さな地域の小さな経済なら、再生可能な自然エネルギーで、十分な文化的生活を送れるはずです。「幸せ」は待っていて来るものではないなら、勇気を持って新しい社会づくりに踏み出すべきです。」
(本書より抜粋)

読後、一番強く思うのは「今この人が一番必要な人材だ」ということです。
いやこの事態になる前に、(政界におられる時に)もっと注目されるべきだったのに……。
「時間よ戻れ!」と思ってしまいます。

中村氏は「この著書で、大きなテーマとして出版するのは最後になるだろうと予感した。」とありますが、私はまだまだ執筆活動をしていただけると確信しています。
いえ執筆活動だけでなく、肩書きのない「中村敦夫業」を、これからも精力的に進めていただきたいと願っています。

《追記》
広報宣伝部長(自称)といたしまして、かなり遅い広報宣伝活動になりましたことをお詫びします(汗)。









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Re: 「簡素なる国」を目指して

お邪魔いたしやす。

人間の欲望は放っといたらどこまでも暴走すると
いうことは過去の経験でわかってるはずなんですが
なかなか止めることができません。
やはり制御する哲学というものが要りますね。

悲しいけど今回の震災で、これからの国の行き方を
考えるきっかけになったのではないでしょうか。

中村氏は今最も必要なリーダーです。
政界に現れるのが早すぎた気がします。

Re: 「簡素なる国」を目指して

『少欲知足』
よい言葉ですね。
「奪い合えば足りなくなってしまうが、分かち合えば足りる」という言葉も好きです。

が、かなりの数の国民が、簡素を貧相だと思い込んでいるようです。
敦夫さん、これからもこういった活動続けて欲しいです。

それにしも40年も経つというのに、未だに紋次郎と中村敦夫さんを切り離すことが出来ず、にこやかな笑みをたたえた敦夫さんには違和感を持つ私って一体…。(笑)

私はお夕さんと同じく13歳で紋次郎と出会ったのですが、お夕さんは早生まれで、私より一学年上なんですね。
じゃあ、「72年の中二コースで紋次郎の特集をやっていた」と言っても、通じないわけです。(笑)

  • 20110722
  • TOKI ♦nhNJg39g
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Re: 「簡素なる国」を目指して

桐風庵さま
コメントをいただきありがとうございます。

『人間の欲望』は、明らかに自然の摂理から大きく逸脱していると思います。
自然界に生きるものたちは、ちゃんと身の丈を知り、必要以上に欲望を持ちません。
本能はありますが……。

人間の欲望のせいで、結局人間が生きにくい世界をつくってしまったと言えます。
皮肉なものです。

これからは紋次郎の生き方や容貌のように、削ぎ落としていかないといけませんね。

中村氏は政界を退かれましたが、後継者はいらっしゃらないのでしょうか。
また、講演を拝聴したいものです。

  • 20110722
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 「簡素なる国」を目指して

TOKIさま
コメントをいただきありがとうございます。

週刊誌に敦夫さんのインタビューが掲載されていて、今行きたいところは「ブータン王国」だそうです。
きっと「幸福度指数」が95%という国民の心の持ち方に興味を持っておられるんだと思います。

幸福は金や持ち物で測るものではない、どんなに苦しくても、支え合い助け合うことで幸福を感じる事ができる、というのがブータンの国民性だそうです。

金を追求するほど満足を味わうことができなくなりますが、今あるもので十分であるとする『知足』の精神であれば、幸福はすぐ得られるのかもしれませんね。

紋次郎の毎日を思うと、いかに我が生活が幸福であるか(笑)……(こんな生活でも?)

  • 20110722
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 「簡素なる国」を目指して

御無沙汰しております。
「JIN-仁-」の終盤で もう少し中村敦夫さんの出番があると思って期待していただけに、落胆の色は隠せませんでしたが、過ぎた話は置いておきまして。
申し訳ありませんが、まだこの本を拝読して居りませんので、早々に…と思っています。
贅沢なことでも 慣れてしまうと当たり前になってしまうという経験はどなたでもお持ちですよね。
足るを知るのは難しいことですが、心掛けねばならないと日々感じている次第です。

  • 20110725
  • マイタ ♦B2BsuZNw
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Re: 「簡素なる国」を目指して

マイタさま、コメントをいただきありがとうございます。

私も敦夫さんが、いつ出演されるかずっと待っていたのですが、最終回だけ……。
もうちょっと、絡んでほしかったですね。

さて広報宣伝部長(自称)が、この体たらくでございます。敦夫さんに申し訳ないです(汗)。

今までずっと提唱されてきたことが、少しもブレずにまとめられていて、これこそ「紋次郎気質」を感じました。
是非とも読んでいただきたいと思います。
また、感想などお寄せいただければ嬉しいです。

仏教のすばらしさを再認識しました。
「豊かに生きる」という意味を、よく考えたいと思います。

  • 20110725
  • お夕 ♦wikz35BA
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  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「簡素なる国」を目指して

先日、この本をお夕さんのブログで気になっていましたので図書館でかりました。(ごめんなさい、宣伝部長さんとしては本屋さんに行ってほしいとおもわれますでしょうが・・・。)
とっても共感するところが多々ありました。
ただ、かなり分厚くて、家のこと、実家の事、仕事、の合間ですとなかなか進まずで、返却期限が来て
まんなかあたりまで読んでかえしてしまいました。
また続きを是非よみたいと思います。
本当に政治活動をされていたときもっと注目されてもよかったのに・・・と思いますが、こちらも
若さゆえ疎かったので、勝手ですが今また出てきて下さったらなあ~なんて思ってしまいます。

「金のためなら命もすてる」という言葉が印象的で、経済成長のために自然破壊をして原発も作り、ホントに結局そういうことだな・・・と人間の愚かさ加減を改めて思いました。

  • 20110922
  • てのりぱんだ ♦C/Rcg83E
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「簡素なる国」を目指して

ぱんださま、コメントをいただきありがとうございます。

「簡素なる国」をお読みいただき、宣伝部長といたしまして厚く御礼申し上げます(笑)。

かく言う私もなかなか一気には読めず、あれやこれやと中途半端に色んな本を読み散らしています。
根気がないんですねえ、全く。で、すぐに内容を忘れてしまう……記憶力もないんです。
情けない。

敦夫さんがせっかく、以前から警鐘を鳴らしておられたのに……私も申し訳ない気分です。

一人でも多くの方がこの本を読んで、自然の中で生かされている自分というものに気付いていただけるとうれしいです。

  • 20110922
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
  • 編集 ]
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