紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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第12話「朝霧に消えた女」(中編)

第12話「朝霧に消えた女」(中編)

第12話「朝霧に消えた女」(中編)
(放映 1977.12.21)
しかし女にとっては戸惑うところである。こちらから誘っているのになびかないなんて、そんなに自分のことが嫌なのか……と誰でも思ってしまうだろう。
お加代は「誰かに心中立てしてるんだね。」と尋ね、咳き込む。
「おめえさんも、身体が悪いようで……?」と紋次郎は気遣う。
「構わないんだよ、どうせ長いことはないんだから……」 労咳かもしれない。
「投げやりはいけやせんぜ。」 紋次郎の口から、こんな言葉が出るとは思わなかった。

「お前さんって優しいんだね。」 そう、この回も前回もかなり紋次郎は女郎に優しい。

「お前さんの好きな人ってどんな人なんだろう?」
「そんな者はおりやせんよ。」
「ほんとに?」
「あっしの道連れはこの楊枝だけで……。」
(ドラマの台詞より)

この紋次郎の答えがウケたのか、お加代は高笑いをする。
「からかっちゃあいけないよ、うれしくなっちまうじゃないか。」
その後急にお加代はしんみりして、自分にも好きな人がいたが、もう逢えないかも知れないと呟く。

紋次郎と宿場女郎がいる風景としては、今回で三回目。
「木枯しの音に……」でお志乃と、「九頭竜に……」では小春と、そして今回。どの回も客としてではないのだが、女性ファンとしては、一種の緊張感を持って見てしまう。

虎八の子分たちは宿内の旅籠を調べている。信濃屋にも来たが、お加代がうまくあしらった。

一方十蔵は役人から明日中に囚人を捕らえなければ十手を取り上げると言われ、憤慨している。
そこで誰かを身代わりに突き出そう……紋次郎が見つかれば一石二鳥なんだが、と捕らぬ狸の皮算用をしている。

一晩紋次郎は、お加代の機転で匿われることとなる。
「すっかり借りをつくっちまって……。」
「何を言ってんだい、今夜は私のいい人じゃないか……明日の朝まで離さないよ。」
お加代は紋次郎にしなだれかかる……紋次郎はお加代を邪険に扱わないところを見れば、まんざらでもないのか。
借りをつくった身だからか。

やきもきする展開になってきたが、割って入ったのが石つぶて。外から投げ込まれたようでお加代が窓を開けると下から幼子が手招きをしている。その子がお加代に渡したのは紙切れ。どうも誰かからの文のようである。

第12話「朝霧に消えた女」(中編)

展開が読めてくる……というか、配役を見た時点で筋が読める。文は布きれに包まれていたが、その布は獄衣の切れ端。
ああ、そこまでしなくてもいいのに、というくらいのネタばらしである。
お加代は誰からの文かわかったとたん、思い詰めた表情で行動に走る。

自分をこの宿場から連れ出して欲しいというのである、いわゆる足抜け。
「えーっ!また女郎の足抜け話?!」
前回、集団足抜けがあったばかりなのに連続して?である。
放映の順番はこれでよかったのだろうか、と疑問である。他にも数多くの原作があるのに、あえてオリジナル作品をここに入れるのはなぜかがわからない。

お加代は紋次郎に「八州さまが、咎人さがしに泊まり客を調べに来る!」と嘘をつく。
すぐにこの場を立とうとする紋次郎を制してお加代は提案をする。

「逃げるんだったら明け方前、明け六つの鐘で見張り人が帰る。頼みがある。私をここから逃がしてくれ。宿場さえ脱けられりゃ、後は自分で何とかするから……見つかって殺されてもいい。ずっと手助けする人を待っていた。それに朝の道行きの方が却って怪しまれない。」
一気に喋ってお加代は激しく咳き込む。病状は思わしくないようである。紋次郎はその肩を抱き起こす。
引き受けたとは絶対に口にしない紋次郎だが、「引き受けてくれるんだね。」の問いには否定をしない。

お加代は紋次郎に抱きつき喜ぶ。
「今夜はやっぱり、私にとっていい晩だった。」
しかし、紋次郎は無表情。

白い霧の中、明け六つの鐘が鳴り響き宿場は朝を迎える。
紋次郎とお加代には、何事もなかったと信じたい(笑)。

見張り人が帰るのを確かめ、二人はそっと旅籠を抜け出す。人目につかないよう歩く二人だが、宿場外れで野良に出かける農夫に出合う。じっと見られているのでお加代は先を急ぎ出す。

「急いじゃいけねぇ、ゆっくり歩きなせぇ。」
紋次郎がお加代に注意する。
二人は刈り取ったあとの田んぼに出る。藁が積まれている。

「しばらくここに隠れていておくんなはい。」
その先には無人の廃屋が一軒、霧の中に建っている。お加代は中に入り込む。

紋次郎は一体どこに行くのか。一人どこかに駈けていく。
お加代は文をもう一度読み返す。何と書いてあるのかはわからないが、思い詰めた様子である。

「百姓に野良着を分けてもらいやした。着替えた方がよござんしょう。」
なんと紋次郎は、お加代のために逃走用の着替えを調達してきたのである。ここまでお加代のために積極的に関わるとは思わなかった。匿ってもらったという恩義の為とはわかっているが、いつもの紋次郎ではない。感情移入している。

着替えている最中に、十蔵一家の追っ手が廃屋にやって来る。
「隠れろ!」と紋次郎はお加代に指示して二人は藁積みの中に隠れ、息を潜める。結局追っ手はいつものおマヌケぶりで、二人を見つけられず廃屋を後にする。

一方目籠破りの囚人、長吉(目籠に名前が書かれていた)は未だ獄衣のままで、今度は山で作業をしている男たちの着物を盗ろうとして見つかり、追いかけられている。
お加代はあっさりと着替えられたのに、長吉の方はそうはいかないようである。

宿場からかなり離れたので、紋次郎はこの先の道を教えて別れようとする。
そう、紋次郎よ!ここまでやれば十分である。お釣りが来るくらい、お加代には借りを返したはずだ。

別れようとする紋次郎に、やはりお加代はもう少し一緒にいてほしいと懇願する。
「物にはついでってものがあるじゃないか!」
この一言が効いたようである
紋次郎は一瞬迷うが、何も言わずお加代が目指す道の方へ歩いていく。今回の紋次郎は本当に人が良すぎる。
敵に追われている上に、見つかれば重罪になりかねない足抜け幇助。
しかし紋次郎は敢えて危ない道を選ぶ。

(後編に続く)

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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

う~~む、紋次郎の優しさは「クールな中にキラリと光る」であって欲しいんですがねえ。
ここまでサービス精神に満ちていると、紋次郎離れしちゃうんですが…。

そういや中村敦夫さんと松尾嘉代さんは、翌年「八つ墓村」で兄妹の役で出てましたっけ。

紋次郎が見つかれば一石二鳥って、紋次郎を、虎八っつぁんを殺した上に、目籠まで破った大悪人にしようとしてたんですか。
でも捕まえたら、虎八の子分か、八州様か、どっちに引き渡すつもりだったんでしょうね。

  • 20110804
  • TOKI ♦nhNJg39g
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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

TOKIさま、コメントをいただきありがとうございます。

受けた恩義以上に、紋次郎は頑張りますねえ。
「新……」もここに来て、随分人柄が変わったようにも思います。(一貫性はありませんが)

紋次郎を見つけて、逃げた囚人として役人に渡すというつもりだったんでしょうが、相手が腕の立つ渡世人だということを、すっかり忘れていますね(笑)。

今回の追分宿は賑やかでした。
役人や捕り方がウヨウヨしているのに、渡世人が走り回っていていいんでしょうか?と、思いますが……。


  • 20110804
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

お夕さん、こんにちわ。

今年もやっぱり暑いですね。6月まで涼しかったので、冷夏になるのではと思っていたのですが、この年になると堪えます。

「新・紋次郎」のキャラクターの一貫性のなさは、「俳優人生」に書かれていた『撮影直前に監督が決まっておらず、脚本も出来ていないことが多かった』に原因があるんでしょうね。

先日、女性ファンで40歳の「ちかげ」さんからコメントを頂きました。6歳で「新・紋次郎」を初めて見てファンになり、その数年後に本家の「紋次郎」を見て若い紋次郎に恋焦がれてしまった方です。「新」からファンになったのは珍しいケースですし、わずか6歳というのも驚きですね。

ところで、最近の「なでしこブーム」を見ていると、ジャンルは違いますが、1972年当時の「紋次郎ブーム」を思い出します。

こんな感じでしたよね?お夕さんの印象はどうでしょうか?

  • 20110808
  • おみつ ♦suWcSb.M
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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

毎日「新」を、お夕さんのブログを参考に、どこは早送りするか事前に決めてから観てます。(笑)

今週で放映がお夕さんのブログに追いついちゃうんですが、さあ、原理主義の私が予備知識無しに観て、ズッコケたり怒り狂ったりしないかどうか。

「三途の川」「急ぎ旅」に続き、「泪橋」でも木馬道が出てきてますが、この撮影地はいよいよ雲ヶ畑の松尾谷だと思えました。

三回続けて同じ場所近辺での撮影って珍しいですね。
あの木馬道の美に惹かれたのでしょうか。

あとmixiにも書きましたが、1973年の「クレクレタコラ」のビデオを見ていたら、タコラが紋次郎の格好をして登場し、「僕には関わりの無いこって」と言ってました。

おみつさん、お久しぶりです。
おみつさんのブログにも書き込もうと思ってたのですが、なぜかyahooで登録した珍妙な名前でしか書くことが出来ず、そのままになってるんです。
(スペースお借りしてすみません)

  • 20110808
  • TOKI ♦nhNJg39g
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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

おみつさん、コメントをいただきありがとうございます。

立秋になってから、酷暑がやって来たといった感じです。
紋次郎サンと違って、暑さにも寒さにも弱い情けない我が身です(笑)。

「新……」からファンになったという方は、珍しいですよね。
紋次郎の魅力にたどり着くルートは、いろいろあるんだな、と思いますね。
それぞれのルートから見た景色は、また違ったものがあるでしょうから、ぜひご意見をお聞かせいただきたいものです。

当時の「紋次郎ブーム」に一番驚かれたのは、当のご本人だったようですね。
「なでしこ」のメンバーも、そうかもしれません。
「なでしこ饅頭」なんかもできるんでしょうか?(笑)

  • 20110809
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

TOKIさま、コメントをいただきありがとうございます。

あっという間に放映に追い抜かれます(笑)。
水先案内にならず申し訳ないです。
この先はどうぞ、心してお進みくだせぇ。

「雲ヶ畑」……地名は聞いたことがあるんですが、すごい山奥なんですね。
ロケバスで行くとなると大変だっただろうなあ、と思います。
ロケ地からロケ地に移動するのが、一番のロスだったようですから、「新……」では特にまとめ撮りをしていたのではないかと思われます。
回をまたいでは、さすがになかったでしょうが、ロケ地を探す時間は短縮されたかもしれません。

「クレクレタコラ」懐かしいです。
今考えると、相当シュールな番組だったように思えます。
「タコラ」までやってましたか、畏るべし。
「ゴジラ」もやっていたそうですから(笑)、さもありなん……でしょうかね。
当時のブームから考えると、「一億総紋次郎」ぐらいの勢いだったかもしれません。
(物言えぬ赤ちゃんは別として)

  • 20110809
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

上に書いたクレクレタコラ、you tubeにありました。
タイトルは「あれがうわさのタコ次郎」。
http://www.youtube.com/watch?v=ZSK6LNkz11k

  • 20110813
  • TOKI ♦nhNJg39g
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渡世人

こんばんは♪

いつもながらの「お夕節」冴え渡っておりますね。
今回は、オリジナルという事で比較対象が出来ず、筆も鈍りがちですね。

「渡世人に貸し借りはござんせん」
確かに言葉が足りませんね。
無宿渡世に「貸し借り」は必須でしょう。
「仁義」「一宿一飯」「賭場」など、仕来たりが命の世界かと思います。
紋次郎の心情が特殊なんです。
いつもいつも、博打で勝てる訳はありません。
「何処で果てても・・・」というセリフは、物語上のものなのでしょうね。

旅には路銀も必要です、街道筋の親分に貸し借りをするのが本当でしょうね。
しかも、堅気衆に「もの申す」のも、人別帳外の無宿人は制度外の人間ですから言葉も掛けられなかったと思います。
必然的に堅気衆との貸し借りなど成立しないのです。
「渡世人は仁義が命」と思いましたので、一言を。
お気に障りましたら、ご勘弁下さい。

いつもありがとうございます。
では、又♪

Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

TOKIさま、情報ありがとうございます。

早速見ました。
当時でも、あのチープ感は相当のものでしたが、あらためて見ると逆に新鮮に見えます。

「ボクには関わりの……」
「あっし」ではなく「ボク」なんですね。

楊枝の使い方は、原作にもない斬新さ(笑)。

楽しかったです。

  • 20110814
  • お夕 ♦wikz35BA
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Re: 第12話「朝霧に消えた女」(中編)

ぶんぶんさま、コメントをいただきありがとうございます。

「渡世人に貸し借りはござんせん」
やはりこの台詞は言葉が足らないどころか、間違っていると思います。

仰るとおり渡世の世界は、厳しいほどの貸し借りがあります。仁義を通す世界ですから、不義理をするなどもってのほかでしょう。

紋次郎は、無宿渡世の我が身と堅気衆との境界線を固持しています。身の程を知っていると言えます。
いくら宿場女郎であろうと、堅気の世界に生きている女ですから「そんな気遣うことは言わなくていい」とでも紋次郎は言いたかったんでしょう。
堅気の者は渡世人(なんか)に、借りをつくったなどと思う必要はない……ということなんですね。

「堅気衆と渡世人には、貸し借りはござんせんよ」
だったらよかったんでしょうか。

いつもお気遣いいただき、ありがとうございます。

  • 20110814
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
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