紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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「帰って来た木枯し紋次郎」(1993年)その十二

「帰って来た木枯し紋次郎」(1993年)その十二

「帰って来た木枯し紋次郎」(1993年)その十二
お真知は、虎之助たちと出て行った小平次を探すため宿場内にいたが、五郎蔵一家の者に見つかり連れ戻されそうになる。
「小平次に、何を吹き込んだんだ?!」
とすごまれ、腕を掴まれたとき、紋次郎が現れる。

まず、路地に転がってある木桶、ムシロを使って応戦。続いて、積まれていた薪を手にして、男たちを殴る。長ドスは抜かない。宿場内で長ドスを抜いて、命のやり取りをするということは、いくら何でも無茶な話なので、頷ける。

さて、薪でぶっ叩くのは小気味よくていいのだが、残念ながらよく見ると薪がしなっている。多分、ウレタン仕様の薪なのだろう(笑)。これなら痛くない。
最後の一人を追い詰めたところで、お真知は小平次が危ないことを伝える。紋次郎は小平次の居場所を吐け、と男の首筋に鯉口を切った刃を押しつける。

小平次は虎之助に宿場外れまで連れて来られ、ボコられる。よくぞ、殺されなかったものである。一揆の首謀者として、人身御供として残しておかなければならなかったのだろうが……。

紋次郎とお真知は、気を失って倒れている小平次を見つける。助け起こすかと思いきや、紋次郎、小平次の頬を7~8発平手打ち!その荒っぽい介抱の仕方に、お真知はビックリしている。
「まだ息がある。このまま放って置いたら、野良犬に食われたかもしれねぇ。」

一揆のムシロ旗が、何本も立つところへ、馬に乗った八州廻りの浅香がやって来る。ムシロ旗には「玉村」と書かれたものが見える。「玉村宿」と言えば、「木枯しの音に消えた」のお志乃が宿場女郎として売られた地だったと記憶している。
「運上金の件は取りやめになった!すぐに散るんだ!今やめれば、お上のお咎めはない!」
と、浅香は百姓達に向かって叫ぶ。一揆の集団に動揺が走る。流血騒ぎがなく、運上金は取りやめになったことになる。どうも、浅香が動いたようである。

小平次は、多助の百姓家に担ぎ込まれていた。
「男になりたかったのに、このざまだ……。」
と悔しがり、父と妹、おたみの名を呼び、
「会いてぇよう……」
と弱音を吐く。お真知はそんな小平次に、
「男になるのに、渡世の道しかないってことはない。」
と、優しく諭す。まるで、小平次の姉のような振る舞いである。

紋次郎は手持ちぶさたのように、階下に腰を下ろしている。お真知は紋次郎の背に語りかける。
なにもかも、五郎蔵の仕業だったと気付いた。生前に十兵衛が、縄張りを手に入れるために誰かが命を狙っているようだ、と言っていた。それが五郎蔵だったのだ。宿場外れで十兵衛を刺し殺し、楊枝を首に刺して紋次郎の仕業と見せかけた。私と八兵衛は騙されていた。

そして5年前、野尻の崖から紋次郎と八兵衛を突き落としたのは……と言いかけたお真知の言葉を遮る紋次郎。
「知ってやした。」

「なぜ?」
と驚くお真知に、椿油の香が死んだ姉が使っていたのと同じだったから、と答える。

そういえば、身支度をするお真知が髪を直していたシーンがかなり前に入っていた。
これがドンデン返しなのか……。ちょっと肩すかしをくらった感がする。視聴者としてはその外観から、あれはお真知だったと、大分前から気づいているだろう。
紋次郎の決め手は、あの大雨の絶体絶命の一瞬、襲ってきたお真知の髪の匂いを覚えていたと言うのである。しかし、貧農の娘だった紋次郎の姉が、椿油を使えていたのか、という疑問は残る。

「帰って来た木枯し紋次郎」(1993年)その十二

「許してください。」
と、頭を下げて謝るお真知に、
「過ぎ去ったことでさぁ。許すも許さんもありゃしやせんよ。」
と、お真知を責めることはしない。
「ただ、不思議なことでござんすねぇ。小平次さんを連れ戻しに来て、5年めぇのケリをつけることになろうとは……。」
と言いながら、紋次郎は外の異変を察知し、咥えていた楊枝を襟元に差し込む。どうも、戦闘準備のようである。

「じゃあ、これから五郎蔵の家へ?」
「行く前に、むこうから来ているようで。」

紋次郎は、急いで振分け荷物をほどき、油紙を取って中を開ける。振分け荷物の中が一瞬見える。新しい草鞋、矢立、白い紐、晒しの白布、糸など、旅の必需品が詰められている。このリアリティが素晴らしい。その中から和紙の束を急いで取り出す。
五郎蔵一家の大群が家の周りを取り囲んでいる。

紋次郎の喧嘩支度が始まる。パッと諸肌を脱ぐ。着物が擦れ合う音がかっこいい。上半身は手甲と腹掛け。今回は女性のヌードシーンはなく、紋次郎サンの引き締まった体。
敦夫さんの以前と変わらぬ体型……本当に、メタボでなくて良かったです(笑)。
「お真知さん、二階に上がっておくんなはい!」
お真知は匕首を手にして、覚悟を決める。自分も戦うつもりである。

紋次郎は手早く和紙を水に濡らして、体に貼り付ける。ヤクザ同士の喧嘩のとき、少しでも刀傷を浅くするように、和紙でプロテクトするのだ。今まで、そんな紋次郎を見たことがない。それだけの覚悟が必要なほど、厳しい戦いなのである。紋次郎の所作を、お真知は目を丸くして見ている。視聴者も同じ目線で、見惚れている。

道中合羽を引き回す、三度笠を被り顎紐を結ぶ、長ドスの柄が滑らないように水で湿らせる。一連の動きが実に美しく、無駄がなく、かっこいい。「地蔵峠……」で見せた、身繕いをする所作の美しさに通じるものがある。
最後に、錆朱色の鞘の長ドスを腰に落とす。ああ、すばらしい!頼りがいのある、大人の男の魅力である。
紋次郎の魅力の一つはアクションシーンであるが、殺陣だけではなく、こういう所作のかっこよさがたまらない。

紋次郎は百姓家の戸締まりをして、外からの敵の侵入を少しでも遅らせようとする。この百姓家が、死闘を繰り広げる場となる。これはセットなのだろうか。かなり大きな規模である。
窓や戸が閉められ、徐々に室内が暗くなり、緊迫感が増す。
全部閉め終わった紋次郎は、お真知の手を無理矢理引っ張って屋根裏へ上がる。

誰もいなくなった階下……静寂と薄暗がりの中、窓から三人の男が様子を窺いながら入ってくる。木戸の心張り棒を外すと、ドヤドヤと一家の子分達が入ってくるが、その先頭は槍を持った虎之助。虎之助は槍の使い手という設定である。キリッと引き締まっていて、敵ながらかっこいい。

虎之助の指図で、抜き身を持った三人が慎重に階段を上っていく。この時の、カメラアングルがすばらしい。階段を上る男達を、ローアングルで撮影。この撮影手法、テレビシリーズ第一作目のアバンタイトルと似ている。

そろそろと上る足元と、暗闇に光る抜き身の冷たい輝き……それを固唾を呑んで見上げる、子分たちの顔、顔、顔……中には肩で息をしている者もいる。緊迫した静寂を破って、叫び声が響き、三人の男たちが階段を派手に転がり落ちてくる。その直後、階段下に集まってきた敵の背後に、紋次郎は梁の上から飛び降りてくる。

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Re: 日々紋次郎「帰って来た木枯し紋次郎」(1993年)その十二

「野尻の崖道に居た若い衆が、実はお真知だった」
お夕さんは最初に見た時に気付かれたんですか。さすがだなあ。
私は気付きませんでした。
この時に出てくる回想映像は、冒頭の物と同一ではなく、お真知の顔がわかるショットを差し込んでるんですね。

で、私はドンデン返しを知っても、あの部分は釈然としないのです。
八兵衛が「突くんだ~!」と命令しているのに、お真知は突き刺す構えをせず、二人に体当たりしてますよね。
ここの部分を何度見ても、わざと八兵衛も一緒に突き落としてる風にしか見えないのです。
(追記 スローで確認したら、やっぱりアクシデントだったんだなと納得できましたが、その後で普通に見たら、やっぱり故意に見えてしまいます)
ですから、「実はお真知は、自分が上江田の実権を握ろうとしてるんじゃないの?」という疑惑の念が湧き、そのためお真知が護身用の匕首を取り出すシーンも、「紋次郎を殺そうとしてるのか?」と思ってしまうのです。
体当たりじゃなくって、紋次郎が長脇差をかわした弾みによろけて二人で「あ~れ~」にして欲しかったところです。

この室内シーン、美しいフレア光のオンパレードですね。
とくにお真知が水を汲む窓辺など、A・ワイエスの絵画のようです。

>敦夫さんの以前と変わらぬ体型……本当に、メタボでなくて良かったです(笑)。
ううう…耳が痛い。(笑)

  • 20130910
  • TOKI ♦nhNJg39g
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  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「帰って来た木枯し紋次郎」(1993年)その十二

TOKIさま、コメントをいただきありがとうございます。

冒頭の、あの華奢なシルエット。男性には見えませんでした。となると、お真知さんしかいませんよねぇ。
今回の、女優さんの数は少なかったですし……。

お真知に関するどんでん返し……あの時だけでなく、何度も紋次郎の命を狙っているんですし、やっぱりねぇと言った感じでした。
親切そうに近づき、味方のように振る舞っていたのに、実は……命を狙う敵だった、というのならどんでん返しでしょうが……。

屋外のロケ地の美しさもさることながら、室内のライティングやカメラワークもレベルが高かったですね。

TOKIさんだけでなく、耳が痛い方は大勢いらっしゃると思いますよ(笑)。

  • 20130911
  • お夕 ♦wikz35BA
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