紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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“紋Cafe”でいっぷく「任侠の群像・日本遊侠伝」

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“紋Cafe”でいっぷく「任侠の群像・日本遊侠伝」
旅先で大前田栄五郎の小説を書いているという方との会話の中で、笹沢氏の話が出てきました。以前笹沢氏が取材のため大前田を訪れた……とのこと。
ということは、笹沢氏が大前田栄五郎について執筆しているはずなので、探してみました。そんな中である2冊の書籍の存在を知り、早速入手。

暁教育図書 人物探訪日本の歴史 第10巻「任侠の群像」

古書ということなので、大変安価で購入できました。全20巻シリーズの1巻のようです。初版は1975年(昭和50年)ですので、今から40年以上前の書籍です。

この中で、笹沢氏は大前田栄五郎の生い立ちや縄張り拡大の経緯などを執筆しています。
栄五郎は仲裁役として、巧みに喧嘩の円満解決を図り縄張りを広げていくという手法で、巨大な組織の頂点に立ちます。その点、国定忠治とは対極と言えるでしょう。

面白いエピソードとしては、家の中の風呂には絶対に入らなかったという話。
入浴中に敵に襲われないように、家の近くの桑畑に大きなタライを運び込み、そこで行水をしたということです。もし襲撃されたら桑畑の中に逃げ込むというのです。おちおち風呂にも入れないとは、いかに緊張した生活だったということがうかがえます。
そういえば「雪に花散る奥州路」(原作)の二本桐の武吉は、入浴中でも手元に長脇差を置いていました。

もう一つ興味深いのは、空白の16年間。栄五郎は25歳のとき、久宮の丈八という親分を斬殺し、故郷を離れ草鞋を履きます。41歳で故郷に帰って来たとなっていますので、その間16年、どこで何をしていたか、はっきりしないというのです。

一説によると、佐渡島に流され島抜けしたといわれていますが、笹沢氏はその説を否定しています。
当時、人殺しの重罪人が佐渡島には送られていない、というのです。江戸時代の後期は、無宿人狩りによって集められた罪のない無宿人たちが送りこまれていたので、あり得ないということです。また、人殺しに島抜けとなれば極刑に処されるので、何年経っても故郷に帰れるはずはないと推理しています。

16年間、栄五郎は偽名を使いながら、凶状旅を続けていたとみるのが妥当なのでしょう。その間に男を磨いたのかもしれません。いろいろ想像すると面白いですね。

この出版社「暁教育図書」は、学校教材や教育関連の書籍を数多く発行しています。いわゆるお堅い感じの出版社なのですが、
「日本の歴史」シリーズの中に、任侠の世界を扱った巻が設けられていることには驚きました。任侠、博徒、香具師、芸能と幅広い内容ですので、読みごたえがあります。
写真や図表なども豊富で、図鑑の要素も大きいです。

「大衆文学の英雄像」の項では尾崎秀樹氏が、半七や平次、座頭市、忠太郎など時代小説の主人公のことを紹介しているのですが、なんとそこには「木枯し紋次郎」も触れられています。
作家が生み出した虚構の主人公が、あたかも実在した者のように共感を持って受け入れられる様子が書かれた後の文章です。

「ここにもまた虚構から実在への微妙な変貌がよみとれる。私はまだ見ていないが、最近では木枯し紋次郎の碑まで建ったそうだ。笹沢左保の創造した紋次郎は「あっしにはかかわりのないことでござんす」という生き方と、トレード・マークのくわえ楊子で話題となったが、そのニヒルな態度は戦前の股旅者にはないものだった。しかしドロップ・アウトの魅力は戦前・戦後をとおして変わらない。
 後世の人はあるいはこの紋次郎を実在の人物と錯覚するかもしれない。」(「大衆文学の英雄像」より抜粋)

私もその部類に半分入っているような気がします(笑)。

“紋Cafe”でいっぷく「任侠の群像・日本遊侠伝」

この初版と同じ昭和50年に、笹沢氏は「小説宝石」で「日本遊侠伝」の連載をしています。その中の「韋駄天に賭けた男」の主人公は、大前田栄五郎です。

先日「日本遊侠伝」を、光文社から刊行された文庫本で読みました。他に新門辰五郎、竹居の吃安、日光の円蔵、幡随院長兵衛、水野十郎左衛門の話が収録されています。史料収集と現地踏査をベースにして、ノンフィクション風に仕上がった作品はどれも面白く読めました。

「韋駄天に……」の栄五郎は身体能力が高く、気力も耐久力も抜群の男。その栄五郎の韋駄天ぶりと侠気が痛快な作品で、例の空白の16年の片りんも垣間見えます。

他に興味深かったのは新門辰五郎……テレビドラマ「JIN-仁」で、中村敦夫さんが演じられた町火消し、浅草十番組「を組」の頭です。
当時放映されたとき、興味を持って調べたことがありますが、今回あらためて「最後の火に哭いた男」での辰五郎を読みました。スケールの大きい度量と強烈なリーダー性、そして町火消しの心意気を備えた魅力的な人物として描かれています。

もうここまでくると、どれが実像で虚像なのかわからなくなるのですが、確かめようもありません。言えることは、エンターテイメント的には面白い方がいい。そのあたりは、作者の想像力と構成力、そして筆力にかかってきます。

この2冊……もし見つけられましたら、手に取ってみてください。結構、はまりますよ。



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Re: “紋Cafe”でいっぷく「任侠の群像・日本遊侠伝」

お夕さん、こんにちは♪

「日本遊侠伝」は読んだ事があります。
新書版のカッパノベルスだったと思います。
実在の人物を扱ったフィクションで大変面白かった
事を思い出しました。

話は変わるのですが、「あさのあつこ」の弥勒シリーズ面白いですよ。
新作の六巻目「地に巣くう」が出ていますが、紋次郎の世界観と通じる感じがします。
宜しかったら、ご一読下さい。

Re: “紋Cafe”でいっぷく「任侠の群像・日本遊侠伝」

ぶんぶんさま、コメントをいただきありがとうございます。

さすが読書家のぶんぶんさん、もうすでにお読みでしたか。

「あさのあつこさん」の作品は未読ですが、ぶんぶんさんのおすすめとあらば、ぜひとも読まねば……。

「木暮信次郎」……名前からして「紋次郎」と似ています(笑)。
俄然テンションが上がってきました。

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