紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「悪女列伝~お縫」

日々紋次郎「悪女列伝~お縫」

日々紋次郎「悪女列伝~お縫」
紋次郎作品に出てくる女のほとんどは、悪女と言っていいだろう。それも、いかにも悪女という体ではなく、どんでん返しで本性を現すという展開が多い。悪女の一人ひとりには、それぞれ背景があり、悪女となった経緯が違う。
私がシリーズ内で悪女と言われ、一番に思い浮かぶのは「水車は夕映えに軋んだ」のお縫である。ドラマでは「大原麗子」さんが演じていた。実に日本髪が似合う美しい女優さんだったが、近年寂しい境遇の中、孤独な死を迎えられた。享年62歳。

まず、このお縫の外見からの印象……。

「年のころは24~25歳くらい色が白く女っぽい。決して、艶っぽくはない。内向的な性格の女に見られる愁い顔で、人形のように美しい。顔立ちが整いすぎているせいか、冷たい感じさえした。誰かにいじめられていれば、同情してやりたくなるような弱々しさと繊細さを具えていた。」(原作より抜粋)

このお縫は、姉のお鶴と旅をしているのだが、お鶴はお縫とは対照的な伝法肌で、大酒を飲んでくだを巻き、紋次郎にイチャモンをつけている。そのそばで、お縫が必死にお鶴の無礼極まる言動を制しようとしている。周囲の見物人はみんな、弱々しいお縫に同情をしている。
この虫をも殺さないようなか弱い女が、実は村人を虐殺するように命じていた黒幕だったというどんでん返しが、この先に待っているのだ。

日々紋次郎「悪女列伝~お縫」

「だが、昨日見かけたときのお縫とは、まるで別人のように感じられた。言葉遣いも違っているし、女っぽい美貌にいまはゾッとするような冷たさが見られた。
『高麗川の南に住んでいる百姓たちに意趣返しをするようにと、八五郎、仙造、吉兵衛の三人に指図をしたのはこのわたしさ』
ニコリともしないお縫の顔は、ただ美しいだけの能面のようであった。」(原作より抜粋)

お縫は、胸を刺されて転がっている実の姉のお鶴の腹を長脇差で突き刺し、何の感情も表わさずに止めに喉を突き刺す。

怖ろしい女である。ここまで悪女になってしまった背景には、愛する男を惨殺されたという哀しみと憎しみがあるのだ。そのお縫に紋次郎は言う。
「もう忘れてやりなせえ。三人の代貸もいなくなったことだし、おめえさんひとりでジタバタしたところで、どうにもなりはしねえ」

紋次郎にとっては、昨日という日はない。過ぎてしまったことは、なかったことと同じなのである。
人を恨み憎しみ、その怒りだけで生きているお縫には慰めの言葉は届かないし、元々紋次郎にはそんな言葉を持ち合わせていない。

日々紋次郎「悪女列伝~お縫」

「もう忘れてやりなせえ。」
哀しみも憎しみも、ときが忘れさせてくれる。しかしお縫は過去にこだわり、忘れるどころか憎しみを増幅させていたのである。生きている間、悪女に心の救いはなかった。
その悪女に引導を渡したのは、紋次郎だった。瀕死のお縫の手元に、愛した男からもらった簪を楊枝で飛ばしてやる紋次郎。最期に、悪女のお縫は救われたのかもしれない。

お縫は悪女であったが、印象深い言葉を口にしている。
「女はもともと、酷いもんなんだよ。それに死ぬほど男に惚れるような女には、氷みたいに冷たいところもあるものさ。」

私は少なくとも、このタイプの悪女にはなれそうにない。


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Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お縫」

こんにちは

ここまでクールな性格になるのは、よほど男に惚れていたのでしょう
逆に考えれば、リンチで死んだ半七はこんなに惚れられて、幸せ者でしたね。
浦山海(うらやましー)です(笑)

大原麗子嬢が好演する「お縫」がした意趣返しの表現方法が常識人と全く正反対な言動・行動なのが、この物語の物語たる所以なんでしょうが・・・・



 話変わって
今日は3月3日なので、挿入された写真はちょうど良いカットですね
しかし十二単を纏うお姫様では、あまり世間の事は知りませんから、ここまで惚れる事はないんでしょうけどね
   

  • 20160303
  • makkun4 ♦v8iNFFOw
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お縫」

makkun4さま、コメントをいただきありがとうございます。

か弱そうな娘があんな残虐な指示を出すなんて……というギャップが衝撃的でした。
演じていた大原麗子さんがまた、美しすぎる。ホントに、はまり役だったと思います。

1枚目の写真のお雛様はお顔が魅力的で、「これは絶対、笹沢さん好みだろうなあ。」と感じました。
どことなく大原麗子さんにも似ているように思いましたので、掲載いたしました。
現代作家さんの作品です。
衣装も渋くて素敵でした。

今日はお天気が良くて、おだやかな桃の節句でした。
このまま春に向かってほしいものです。

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