紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「悪女列伝~お甲」

日々紋次郎「悪女列伝~お甲」

日々紋次郎「悪女列伝~お甲」
原作17話の「女郎蜘蛛が泥に這う」に出てくる老婆「お甲」。

「からげた着物の裾を腰ヒモで押さえ、白い手甲脚絆に草鞋ばきの姿がひどく甲斐甲斐しく見えた。年寄りのせいもあるが、その道中支度には悲壮感さえ感じられる。太めの杖を突き、手に菅笠を持っていた。顔に気品のある老婆だった。」(原作より抜粋)
老婆の髪は真白でやや腰が曲がり、年はとっくに六十をすぎている。

このお甲は、自分の息子「煙の千代松」が悪事を働くのを何とか止めようと、後を追っているという世間の噂になっている。

千代松は巨体で、大きな鍔の長脇差を腰に落とし、通りかかった者を脅しては金を奪っている。紋次郎が道を間違えて教えたばっかりに、二人の子どもを連れた母親がこの千代松に左腕を斬り落とされ、七両を奪われている。紋次郎は、自分の間違いで災難に遭った母親の意趣返しに千代松の腕を斬り落とすと、長脇差を抜く。

そこへこの老婆が出てきて、息子を斬るのなら自分を先に殺してくれ、と紋次郎に哀願する。その必死さに紋次郎も長脇差を収める。
「世の中にはやっぱり、おふくろというものがいるんでござんすね、あっしは、初めて教えてもらいやしたぜ」と背中で告げると立ち去るのである。

日々紋次郎「悪女列伝~お甲」

ここまで読むと、子を想う哀れな老女と、読者は心を寄せてしまうのだが……。そこは紋次郎ワールドである。
実は千代松に悪事を働かせ、その金を全部我がものにしていたのが、このお甲だったというどんでん返しがある。

老婆と千代松は元は名主の家の出だったが、村の衆から不帰依の訴えを出されたため、所払いとなり一家は離散となる。お甲は贅沢に慣れていたため、千代松に千両集めるまで悪事を働かせ、老後を悠々自適に暮らそうと考えていたのである。

本当にひどい母親である。本来は気弱で何もできない千代松を怒鳴りつけ、悪事に手を染めさせるとは……。

テレビ版ではこのお甲を「北林谷栄」さんが演じている。名主の奥方ではなく女郎に身を沈め苦労して千代松を育てた、という設定に変えてある。北林さんの豹変ぶりも怖い。我が子なんだから、親が何をさせようと勝手だと言い放つお甲に、やはりこの世におふくろなんてものはいないと、寒々とした言葉を残して去る紋次郎。

お甲の悪女ぶりは、母親のエゴ丸出しであるが、現代でもよく似た状況の親子がいるように思える。
「やっぱり、この世におふくろなんてものはいない」と、紋次郎に言わしめたお甲の罪は重い。



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Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お甲」

最近、親が育児を放棄し自分がお腹を痛めて産み落とした子を殺すと言う事件が多く、寒々とします。
利己主義な親に育てられ、自分が親になった時に「お甲」の様な自分勝手な人間になってしまうんでしょか?

その前に、快楽の代償として子供が産まれてきてしまったので、育てる事が出来ないのでしょうね

お甲も名主の出身で何不自由なく育ったので、「千両貯まるまで」などと悪女ぶりを発揮したのでしょう
本人は、気の弱さで怒鳴られないと何もできないと言ってますが、人を殺して金品を奪う悪党なのに、それを操るワンカットのアップで、北林谷栄さんの顔がアップされ、その眼光は怖いくらいでしたが、笹沢先生の原作で「千代松は巨体」とありますが、映像では寺田農さんでは、ちとばかりミスキャストではなかったか?と感じています。

  • 20160308
  • makkun4 ♦v8iNFFOw
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  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お甲」

お夕さん、お久しぶりです。

お申さんは、なんと見上げたもんだー、の女ですねっ、
見上げるとは,無い物ねだりのなんとも皮肉な感想やわぁ、笑


淡青の句集を購入していただき大変恐縮しております。
文字が小さいのが私たち向けではないですよねっ、すんまそー

感想をお聞かせくださればうれしいものです、よろしく!


  • 20160308
  • 淡青 ♦vMjpPURI
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Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お甲」

makkun4 さま、コメントをいただきありがとうございます。

間引きが横行した紋次郎の時代と、虐待事件が後を絶たない現代と、あまり差がないように感じてしまいます。
報道を目にするたびに、怒りと悲しみで胸が張り裂けそうになります。

寺田農さん……キャスティングのポイントは何だったんでしょうね。寺田千代松は、少しコミカルな感じがしました。

北林さんのあの顔は、今でもうなされそうなインパクトです。
ああ~、怖っ!

Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お甲」

淡青さま、コメントをいただきありがとうございました。

御本が届くのを、首を長くして待っています。

俳句については不勉強なので、感想と言われましても……とてもとても、であります。

ゆっくり、味わわせていただきますね。

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