紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎 「悪女列伝~お清」

日々紋次郎 「悪女列伝~お清」

日々紋次郎 「悪女列伝~お清」
「四度渡った泪橋」に登場するお清は、貧しい百姓家の出で、同じく百姓である梅吉の嫁である。このお清は、鄙にもまれな器量よしなのだが、三人の義理の弟を中津の友蔵一家の者に殺され、今度は自分の夫である梅吉も殺されるという悲劇のヒロインである。

「二十四、五の年増だった。身装りは粗末な野良着姿で、百姓の女房だと一目でわかる。
 だが、ハッとするような器量よしだった。化粧っ気もないのに、まるで絵に描いたような美人である。鄙にはまれなというより、これほどのいい女は都会の地でも滅多に見かけることはないだろう。」(原作より抜粋)

身なりは粗末だが美人、そして名前が「お清」……もうこれだけで、清楚で健気に生きる薄幸な女というイメージが作られる。

日々紋次郎 「悪女列伝~お清」

前述の四兄弟は、いずれも石和の代官所に訴人に行く途中に殺されているのだ。何を訴えに行こうとしたか……。

中津の友蔵の弟は闇の金貸し。金が返せないと、女房や娘を友蔵が宿場女郎に売り飛ばす。名主に訴えようとしても、無駄。友蔵の実の兄が名主なのだ。この悪徳三兄弟のために、土地の者たちは苦しめられている。

まず初めに、闇の高利貸しの件を訴えに行った次男の市助が友蔵一家の身内に殺された。次に人殺しの下手人である友蔵一家の事を訴えに行こうとした三男の与作も同じように殺される。用心をして一年後に訴人に走った四男の捨吉も、なぜか友蔵たちの知るところとなり殺される。そしてとうとう、お清の夫である長男の梅吉も訴人に行くことがバレて、友蔵一家の者に殺されてしまうのである。
泪橋を四度も見送った身内が、すべて死出の旅となったお清のことを、土地の者たちは哀れに思い同情するのだが……。

実は四人の男たちの行動をすべてバラしていたのは、このお清だったのである。お清は自分の夫の命まで、友蔵に売っていたのである。義理の弟たちは一人につき十両、味を占めたお清は夫については十五両とふっかける。
大金を手に入れて江戸で華やかな暮らしをしたいがため、自分の手は汚さず、訴人に行くタイミングを友蔵に報せる悪女お清。「血も涙もない」というのは、この女のようなことを言うのだろう。今でいえば、保険金目当てに命を奪う事件と似ているか。

血のつながりはないといえど、自分の身内を金のために売るという、非情で阿漕な女の名前が「お清」というのも皮肉なものである。全く清いところがないのである。

日々紋次郎 「悪女列伝~お清」

しかし、私がお清のことを悪女と感じるのはそこだけではない。お清は、自分の外見の美しさを十分認識し、それを利用しようと思っている。

周りの者から「甲州一の別嬪」だと、しょっちゅう言われている。
「江戸にでも生まれていたら、きっと玉の輿に乗ったことだろう」
「器量がいいのは女の宝だ」
「器量のいい女には、それに相応しい生き方がある」

どれもお清の口から出た言葉である。

自分はこんなに器量がいいのに、一度も小判も拝めず百姓のままで暮らすのはまっぴらだというのだ。
器量よしも、こんな思い上がった根性を持つようでは逆に仇となる。普通の器量だったら、こんな大それたことを考えなかっただろう。

こんな悪女をつくったのは、貧しさと世間の風評である。
貧しい百姓は、一生そのままその土地にしがみつき生きるのが常。しかし、金を持って都会に行けば、きっといい暮らしができる。自分はこんなに美しいのだ。周りの者が放っておくはずがない。
お清は夢を見たのだろうが、それは実現しなかった。

美しいが故に、野望を持ってしまったお清だが、その悪行が周囲にバレてしまった後はどうなったのだろうか。原作には書かれていないが、村八分か村から追放だろう。

夢を持つのも器量がいいのも、ほどほどがいいようである。


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Re: 日々紋次郎 「悪女列伝~お清」

こんにちは
名前が「お清」でもしかし、心は汚れきってる
この手の輩はいつの世にも居るもんですね

昔、貧しい山村では、産まれて死ぬまで村から出たことがないという人が殆どだったとありましたね
井の中の蛙 大海を知らず
と言いますが、小さな頃から小さな村の中だけで、おだてられて育ったのでしょうが、怪我をした紋次郎の養生中に楊枝の笛を教えてくれた侍の娘(名前を失念)の様に女郎屋に売られず、女衒に連れて行かれずに済んだのか?と笹沢先生のストーリーに感心します

もし同じ村に他に美人がいたら、
「器量良しは私だけ」
と友蔵の様なヤクザに殺害依頼もしかねない性格

自分勝手もここまで行くと、女・子供に刀を抜かない紋次郎もお手上げですね
  

  • 20160414
  • makkun4 ♦v8iNFFOw
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎 「悪女列伝~お清」

makkun4さま、コメントをいただきありがとうございます。

「人は見た目が9割」なんて言われるぐらいですから、外見がいい人は何かと得をするんでしょうか。

お清は、野良着姿でもハッとする美しさでしたから、着飾ったらさぞかしもてはやされたことでしょう。
しかしその瞬間、自意識過剰ぶりがバレるような気がします。
品格の無さは、姿かたちでは覆い隠せないと思うからです。

「身の丈を知る」ことも、幸せの第一歩だと思います。

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