紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「悪女列伝~お里」

日々紋次郎「悪女列伝~お里」

日々紋次郎「悪女列伝~お里」
前回のお清は夫と義理の弟たちを裏切った悪女だったが、今回の「虚空に賭けた賽一つ」のお里は、血のつながった弟たちを裏切る。
テレビ版ではお里ではなく、名前はお春に変えられている。

お里には八人の弟がいる。貧しいが故に三島に女郎として売られ、弟たちに、年季が明けて戻ってくるまでは父母の墓を守るようにと言い残す。姉は身売り、父母無き後の八人は村の親戚縁者に引き取られるが虐待される毎日。とうとう八人は家を飛び出し、兄弟だけで亀穴峠の中腹に小屋をかけて暮らすようになる。

それから5年後、村に道を開いても良いという許可が出る。峠を迂回せずに街道に出られるということで、工事が始まるが、その道をふさぐように八人兄弟の父母の墓がある。墓を守ろうとする兄弟たちと村人たちの争いは、死者まで出る始末。

膠着状態の中、末っ子の八郎が訴人のため召捕られる。代官は、八郎を餌にして兄弟たちをおびき寄せ、一網打尽にしようという計画である。誰が八郎を訴人したのか……あろうことか、紋次郎が訴人したと疑われ、兄弟たちに命を狙われる羽目になる。

日々紋次郎「悪女列伝~お里」

訴人したのは、兄弟たちの実の姉「お里」だったのだ。お里は年季が明け、大店の隠居の囲い者になると言う。

「もう昔とは、縁を切りたかった。山辺村も弟たちのことも、わたしには関わりないんだ。わたしは生まれ変わったお里に、なりきろうとしたのさ。」

「八年も、女郎をやってごらんな。考え方だって、まるっきり変わっちまうんだよ。もともと人は変わるもの、別人みたいになったって不思議じゃないのさ」

「あのねえ、八年間も人には言えない苦労をして来たんだよ。それで、やっと年季が明けたんだ。これからはもう自由に、しあわせな暮らしをしてみたいって思うのは当たり前だろ」(原作より抜粋)

お里の言うことも一理ある。しかし自分のしあわせのため、八人の弟たちの縁を切るだけではなく、命をも犠牲にしようと考えるのは……やはり悪女であろう。

「おらたちは、変わらなかった。八年前からずっと、墓を守り続けて来ただ。姉ちゃんの帰りを待って……」
八郎の言葉は重い。

お里も兄弟たちも、貧しさが生んだ悲劇の中にいる。そして八年という年月。音信不通の八年は、お互いの境遇だけでなく心の中も、推し量ることのできない隔たりが生じていた。

紋次郎シリーズでは、女は変わるものとされることが多い。女は生き抜くために変わるのである。そして男は、その変貌ぶりに呆然とするのだ。


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Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お里」

私も原作を読みましたが,やるせない思いが残ったように憶えています.

凶悪な兄弟たちが純朴な心根の持ち主たちであった事と,八年を経たお里の変わり様が対をなし,お互いを天と地や陰と陽との隔たりにまで追いやる結末を読み終え,しばらく黙したものです.

そこにも顔色ひとつ変えない紋次郎がいる訳ですが,読み手の私は彼の傍観に相乗りして世間の有様を眺めていたのかもしれません.

  • 20160429
  • 寅さんのおにいちゃん ♦-
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  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お里」

寅のおにいさま
コメントをいただきありがとうございます。

変わってしまう哀しみと、変わらなかった哀しみが交錯した作品でしたね。

話は変わりますが、この作品のテーマとタイトル「虚空に賭けた賽一つ」とがあまりしっくり来ないのですが……。
八人の兄弟たちもお里もみんな死に絶え、先に逝った父母と同じ虚空に魂は漂っているのかもしれません。

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