紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「悪女列伝~お夕」

日々紋次郎「悪女列伝~お夕」

日々紋次郎「悪女列伝~お夕」
紋次郎が、初めて読者の前に現れたのは「赦免花は散った」である。そして、シリーズ初回にして紋次郎を騙した悪女が「お夕」である。この記念すべき女「お夕」の名をハンドルネームにいただいた限りは、やはり触れないわけにはいかないだろう。

紋次郎は、基本的には人間不信であるが、その始まりは自分の出生にまつわるトラウマからと言えよう。「間引き」をしようとしていた親の存在を知ったことが、第一の人間不信。幼かった紋次郎は、その事実を聞いてから無口になる。

第二の人間不信は、幼馴染だった兄弟分「日野の左文治」の裏切りと悪女「お夕」の奸計にはじまる。
唯一心を許した兄弟分であった左文治の身代わりを引き受け、三宅島に遠島となる紋次郎。紋次郎が乗る流人船の見送りに来ていたお夕は、紋次郎との別れに涙を流し、あろうことか小舟から海に身を投じる。

お夕は左文治の近所に住む両替屋の娘だった。色白で愛嬌のある美人とある。時々左文治のところに遊びに来ていたお夕は、口数は少なかったものの紋次郎と言葉を交わしている。堅気の女には全く縁のない紋次郎であり、お夕の気持ちに気づくはずもない。遠島になった紋次郎と結ばれることは叶わないという絶望感から、お夕は衝動的に入水自殺した。紋次郎の驚きと悔恨はずっと続く。

左文治は危篤状態の老母を看取るために、紋次郎に身代わりを頼む。母を見送ったらすぐに自首をするという約束だったが、すべて嘘。それどころか、紋次郎を殺すために三宅島に刺客を送り込むのだ。

日々紋次郎「悪女列伝~お夕」

事実をすべて知った紋次郎は島抜けした後、左文治の処に急ぐ。しかし、左文治が裏切ったということより衝撃的な光景を紋次郎は目にする。その左文治のもとにいたのは、身投げをしたはずのお夕だった。お夕は生きていたのだ。お夕は紋次郎が遠島になるずっと前から左文治と深い仲だったのだ。そしてこのすべてのシナリオを考えたのは、なんとお夕だったのである。

「紋次郎は、寂しげな笑いを浮かべた。やはり、何も知らなかったほうが、よかったようである。死んだとばかり思い込んで、お夕の冥福を祈っていたときのほうが、まだ何か心の拠り所みたいなものがあったような気がする。お夕が生きていて、どういう企みがあって狂言自殺を計ったかを知り、紋次郎は漁船で漂流していたときよりも更に孤独になった。ひどく空しかった。」(原作より抜粋)

少なくともこの事実を知るまでは、紋次郎の心の中にまだ人間らしい感情があったはずだ。しかし裏切り者の左文治を、陰で操っていたのがお夕ということを知った紋次郎の心には、怒りでも哀しみでもなく、虚無感だけが占めている。
主題歌である「だれかが風の中で」の歌詞に「心は昔 死んだ」とあるが、まさにその心境であろう。

毎日、冥界での幸福を紋次郎に祈られていた「お夕」は、紋次郎を踏み台にして、冥界どころか娑婆で好いた男と幸福に暮らしていたのだ。一方、島流しの身であるもう一人の女流人「お夕」は赦免を許されず、絶望の中、赤子を抱いて断崖から身を投げた。

「赦免花は、散ったんでござんすよ」
これが悪女「お夕」に言い捨てた紋次郎の最後の言葉である。その瞬間、紋次郎は新しい自分になった気がした、と原作にはある。

紋次郎を決定的な人間不信に陥らせ、新しい自分に生まれ変わらせた運命の悪女「お夕」。「お夕」がシリーズ一番の悪女なのかもしれないが、紋次郎ワールドの生みの親とも言える重要な女であることも確かである。


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Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お夕」

遅くにコメントありがとうございました。久しぶりに虎フアンとして溜飲を下げました。毎度辛い思いをさせられていますから・・たまには喜ばせてほしかったですよね~~。
明日は岩崎らしいです。相手は今村です。連勝をしたいところです。!

  • 20160527
  • 荒野鷹虎 ♦-
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お夕」

鷹虎さま、コメントをいただきありがとうございます。

昨夜はヒヤヒヤものでしたが、今日はどうでしょうか。
岩崎選手もいいピッチングをしているものの、勝ち星に恵まれていません。
打線が奮起して、何とか1勝をプレゼントしてほしいですね。
粘り強いピッチングを期待しています。

Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お夕」

お夕さん

いなさです。「赦免花は散った」がTVシリーズになかったのは残念ですね。その分、映画でカバーしてもらったのでしょうね。映画の江波杏子さんの「お夕」は印象的でした。手元に、芸文コミックの「木枯し紋次郎」がありますが、この劇画の中の「お夕」は、なかなか、上品な悪女という風に描かれていると思います。反対に、「甘ったれちゃいけねぇ」と言われそうですが。(笑)

  • 20160602
  • いなさ ♦-
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「悪女列伝~お夕」

いなささま、コメントをいただきありがとうございます。

江波杏子さん、美しい女優さんです。
「新木枯し紋次郎」では「二度と拝めぬ三日月」で国定忠治の女「お銀」役として笹沢氏と共演されましたね。

「赦免花……」ではお夕の二役をされましたが、流人のお夕は違う女優さんの方が良かったように思います。(江波さんでは美しすぎます)

赦免花は蘇鉄の花とされていますが、あまり赤くはないのですね。実物を一度見たいものです。

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