紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「冥土に送った女たち・(前編)」

日々紋次郎「冥土に送った女たち・(前編)」

日々紋次郎「冥土に送った女たち・(前編)」
紋次郎は、女には長脇差を向けないのが基本である。しかし例外が何人かいる。

一人目は「大江戸の夜を走れ」のお小夜。
テレビ版のお小夜は匕首を手にして紋次郎の背後を狙うが、原作では何も持たずに紋次郎に体当たりをする。紋次郎は反射的に長脇差で刺してしまうのである。大金を狙う白狐の源六の情婦として、紋次郎を騙していたお小夜。


「(前略)紋次郎さん、わたしを殺したからって、気にするんじゃないよ。わたしのほうで、殺してもらおうとしたんだからね。お蔭で、楽になれる。生きているっていうのは、寂しいことだものね。紋次郎さん、お小夜はとても楽になれそう……」(原作より抜粋)


愛する為吉がお縄になった時点で、お小夜は生きている意味がなくなっていた。自暴自棄になり、白狐の源六の囲い者になったお小夜だが、愛したのは為吉ただ一人だったのだ。
殺してもらおうとした、という言葉を残したお小夜にとっては自殺行為だったのである。

日々紋次郎「冥土に送った女たち・前編」

二人目は「水車は夕映えに軋んだ」のお縫。
愛する半七の意趣返しをするために、何人もの百姓たちを手下に命令して殺させたお縫。挙句には、自分の実の姉までもためらいなく殺してしまう冷酷さ。
もう忘れてやりなせえ、と珍しく紋次郎が諭すのだが、お縫には通じない。


「冗談じゃないよ。わたしはまだまだ、殺したりずにいるんだからね。ひとりになっても、半七の意趣返しは続けるつもりさ。それとも、お前さんにやめさせることができるとでも、言いたいのかい。まあ、無理だろうね。やめさせるのは、わたしを殺すほかはないんだ。ところが、木枯し紋次郎はどんな相手だろうと、女を殺す長脇差は持たないというんだからさ」
お縫は、長脇差を持ち直した。
「おめえさんに向かって、長脇差は使わねえが、おめえさんが死なねえとは限らねえんですぜ」
紋次郎は、力なく言葉をこぼした。(原作より抜粋)


このとき、紋次郎にはお縫に対する殺意があったのだろうか。どんな手段でお縫の命を断とうと思っていたのか。

お縫はその後、姉のお鶴の喉に長脇差を突き立てて止めを刺す。その長脇差の鍔の下を、紋次郎は自分の長脇差の峰で叩いて飛ばす。弾き飛んだ長脇差はお縫の胸を刺す。確かに、紋次郎の長脇差は女の血を吸わなかったが、結果お縫は息絶える。こんな芸当めいた方法をなぜ使ったのか、疑問は残る。


「長脇差を確かに使わなかったけど、女を殺したことには間違いないんだよ。木枯し紋次郎がそのことをすぐ忘れられればいいんだけどねえ」
顔色の失せたお縫が、呟くように言って紋次郎を見上げた。
「あっしには、昨日という日がありません。明日がもし来るようだったら、振り返って思い出すようなことは何もねえんでしょうよ」
紋次郎は、虚ろな顔でお縫を見おろした。(原作より抜粋)


女を斬る長脇差は持たない、言い換えれば自分は女を殺さないという鉄則を破った紋次郎を、お縫は非難しない。それどころか、忌まわしい記憶として残るのではないか、と気遣っている。そのお縫に、振り返るような思い出はないと無感情で答える紋次郎。

心底愛した男の死に我を忘れ、怒りと憎しみだけで生きてきたお縫は、もうすでに亡霊になっていたのだ。成仏できず業火の中にいるお縫に引導を渡し、業火を消したのが紋次郎だったのかもしれない。

今わの際のお縫の手に、半七からもらったという簪を楊枝で飛ばしてやる紋次郎。お縫の閉じた目許には笑みが漂っているかのよう……と記述されている。

少なくともお小夜とお縫については、紋次郎への恨みつらみはなさそうである。


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Re: 日々紋次郎「冥土に送った女たち・前編」

謹賀新年!
今年も宜しくお願いいたします。紋次郎さんにも宜しくねー。笑
明日は関西にも寒波が来るようですので気をつけて下さい。!☆!

  • 20170110
  • 荒野鷹虎 ♦JyN/eAqk
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Re: 日々紋次郎「冥土に送った女たち・前編」

鷹虎さま、コメントをいただきありがとうございます。

本年もよろしくお願いします。

北海道に比べると大したことはない寒さですが、こちらもかなり冷えてきました。これから何回もの寒波を乗り越えて、春がやって来るんですね。
「春遠からじ」と思いながら、過ごしたいです。

ご自愛くださいね。

  • 20170111
  • お夕 ♦wikz35BA
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