紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「冥土に送った女たち・後編」

日々紋次郎「冥土に送った女たち・後編」

日々紋次郎「冥土に送った女たち・後編」
三人目は「明鴉に死地を射た」の千鶴。千鶴については紋次郎は明確な殺意を持って対峙している。


「あっしの長脇差は、女の血を吸ったことがありやせん。ですが、おめえさんだけはどうやら、別のようですねえ。おめえさんは、刀で何人も斬った。女じゃあござんせん」(原作より抜粋)


紋次郎は千鶴を、女としては認めていない。何人もの人を斬った女は、紋次郎の鉄則からは外れるというのだ。千鶴は刀を構え紋次郎を殺そうとしている。それもその腕前は、紋次郎をはるかに超えている。中途半端な気持ちでは自分の命も危うくなる。仏心を出す余裕もなかっただろう。

その点からいうと、ずっと後の作品になるが「悪女を斬るとき」のおりんはどうなのだろう。おりんも、何人もの人を殺め放火まで犯しているが、命までは奪わなかった。おりんは土下座をして、命乞いをしている。自分の生い立ちを語り、非を詫びる。しかし紋次郎は「そんな言い訳こそ、あっしにはかかわりのないことでさあ」と一蹴している。
だが、女の命である黒髪をバッサリ斬り落としただけである。おりんを殺さなかった紋次郎の気持ちの変化は、いかばかりのものか。年を重ね、仏心が出たのかもしれない。

四人目は微妙なのだが「冥土の花嫁を討て」のお縫(お咲)。なぜ微妙かというと、直接紋次郎が長脇差で殺めた訳ではないからである。紋次郎はお縫の情夫である小平太の喉元を斬り、背中を突き飛ばす。小平太は勢いよくお縫にぶつかり、二人もろとも絶壁から落ちる。小平太に殺意を抱き、長脇差で命を奪った紋次郎だが、落ちていったお縫に言葉をかける。
「おめえさんこそ、冥土の花嫁ですぜ」

紋次郎にとっては、小平太よりお縫の悪行が許せなかったのである。背中を突き飛ばした紋次郎に、お縫への殺意があったかどうかはわからないが、その行為によってお縫は死ぬ。

日々紋次郎「冥土に送った女たち・後編」

最後の五人目は「狐火を六つ数えた」のお熊。お熊は祈祷をする老婆で、身籠ったお夏を狐憑きとして、赤子を流そうと画策する。


先頭になっているのは、白髪を振り乱した七十ぐらいの老婆であった。はだけた衿元から、骨と皮だけの胸が覗いている。左手に白い球ばかりの、数珠を持っていた。三百連以上に見える長い念珠である。(原作より抜粋)

「猿のような声で」  「顔も猿と狼を一緒にしたみたいで、人間らしくない不気味さを感じさせる。」  「鬼婆のような形相」  「傲慢不遜な態度」

およそお熊について肯定的な表現は一切ない。かなり悪い印象である。
このお熊は、金のために仲間と一緒になってお夏にリンチを加えるのである。最後には、長脇差で紋次郎の背後から襲いかかる。大した婆さんである。

普通紋次郎は、老人や女、子ども……いわゆる弱者には寛大であり、決して荒っぽい真似はしない。しかし今回は老婆であるが許さない。
紋次郎の怒りはお夏への暴力というより、お夏の腹の中の赤子に対しての感情である。その怒りが紋次郎を衝き動かし、お熊を斬る。止めは刺さなかったが、多分お熊の命は助からないだろう。
老婆を斬ったということはショッキングなことではあるが、紋次郎の生い立ちを考えると、怒りの矛先となるのは当然だろう。

しかし思うと、女、子ども、老人……弱者とされる者から、何度紋次郎は騙され、命を狙われたことか。

弱者とは何か、何をもって弱者というのかを考え直さないといけないようだ。


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Re: 日々紋次郎「冥土に送った女たち・後編」

「女が自分を殺そうとしているのを知りながら、身を守ろうともせず、あえてそれを受け入れる」。
小仏の新三郎しかり、酒巻の長次郎しかり、初期股旅小説の、ひとつの美学でした。
紋次郎も、そういったところを持たせたかったのでしょうけど、本当に殺されたら連載が続かない。
それで、言行不一致みたいな結果になったのでしょうね。
こういったストイックな設定が足枷になって、後期紋次郎は作者の手詰まりをも感じます。
後年書かれた姫四郎の、「あっしは、女を斬る長脇差は持ち合わせていねえなんて、綺麗事が大嫌いでござんしてね。」のセリフは、作者の魂の叫びにも感じました。

それにしても…「女郎蜘蛛」のババアこそ、成敗してほしかったです。(笑)

  • 20170118
  • TOKI ♦nhNJg39g
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  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「冥土に送った女たち・後編」

TOKIさま、コメントをいただきありがとうございます。

「女を斬る長脇差は持たねえ」とは言うものの、連載の初めから女に騙された紋次郎でしたね。

美学と言えば美学なんでしょうが、それに値しない女が何と多いことか……。

姫四郎にも彼独特の哲学がありますが、こちらの方が断然、話の展開に広がりがありそうです。

女郎蜘蛛の婆さん……あれは婆さんの風上にも置けない(笑)ババアです。

  • 20170119
  • お夕 ♦wikz35BA
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  • 編集 ]
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