紋次郎気質

1972年、一世を風靡した中村敦夫演じる木枯し紋次郎。笹沢氏が生み出した紋次郎とを比較しながら、紋次郎の魅力に迫ります。

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日々紋次郎「ニセモンジロー」

日々紋次郎「ニセモンジロー」

日々紋次郎「ニセモンジロー」
テレビ時代劇の定番……主人公の「偽物」が出てくるという展開。「水戸黄門」もよくニセ黄門様が出ていたものだ。

紋次郎シリーズでも、何人か「ニセモンジロー」が登場するので、列挙してみる。

「六地蔵の影を斬る」
以前から、紋次郎に心酔していた八幡の常平。
恋女房と伜を殺された意趣返しのため、五兵衛を斬るのだが、そのとき思わず「木枯し紋次郎だ。」と口走ってしまう。常平は騙りを働いたのではなく、憧れていた紋次郎と自分を重ねてみたかったのである。

「噂の木枯し紋次郎」
紋次郎が斬り殺されたか!?と、思わせるほど酷似していた喜連川の八蔵。八蔵は病気の妹に金を送りたいがために、仙太郎の頼み通りニセ紋次郎となって殺される。命と引き換えに、紋次郎として死んだのである。外見だけでなく、虚無的な雰囲気までがよく似ていた八蔵も魅力的だった。

「無縁仏に明日をみた」
紋次郎とは似ても似つかないのに、紋次郎に間違われて殺される力蔵。
間違われて殺されることで、力蔵の伜に恨みを抱かせ、紋次郎を狙わせるという回りくどいやり方。思惑通り伜の一太郎は、紋次郎に重傷を負わせ復讐しようとする。

日々紋次郎「ニセモンジロー」

「夜泣石は霧に濡れた」
湯原の勘八は紋次郎を騙り、村娘の「お清」を孕ます。その子「清坊」は実父の勘八に使われて、間引きの片棒を担がされる。勘八は紋次郎と同郷の幼馴染みであり、噂に高い紋次郎に嫉妬して、思わず「おれは紋次郎だ。」と口走ってしまったのだ。
「幼馴染みが、やがては果し合いかい。」これがニセ紋次郎、勘八の最期の言葉である。

「木枯しは三度吹く」
紋次郎という名前のために、勝手に村人から間違われた男、「相州無宿の紋次郎」。
本物紋次郎の財布を掏るという至難の技を見せたのだが、哀しいかな腕は立たず、悪漢たちに無残に殺されてしまう。実名が紋次郎だったということで、計らずも寿命を縮めてしまう羽目になる。

「砕けた波に影一つ」
この作品に出てくる盗賊集団の頭、勝五郎は紋次郎に顔がそっくりという設定。
勝五郎の情婦であるお甲は、死んだ勝五郎と面影が似ている紋次郎のケガを手当てする。その後、紋次郎に降りかかる災難の渦中に、お甲は再度登場する。「借りを返す」はずだった紋次郎であったが、お甲は命を落としてしまう。

「四つの峠に日が沈む」
「もんじろう」として登場するのは、お民の飼い犬だった。
この忠犬「もんじろう」は、紋次郎と対峙する浪人の足に噛みつく。あっぱれ!もんじろうである。

日々紋次郎「ニセモンジロー」

「夜桜に背を向けた」
大店の美濃屋の一家八人を殺し、二十両を奪った盗賊三人組は「生国は上州新田郡三日月村の木枯し紋次郎だ。」と怒鳴ったという。
そもそも、名前を隠したい盗賊が名乗るというのもおかしな話だが、これも紋次郎を騙った輩である。その後紋次郎は、ニセ紋次郎に斬られたという男を甲斐甲斐しく介抱するのだが、その男こそ名前を騙った盗賊「役者の梅之助」だったのである。

「さらば峠の紋次郎」
侍崩れの剣豪「峠花の小文太」が、妹の敵として紋次郎を追い続けるシリーズの完結編。
「ニセモンジローシリーズ」の中では、一番罪作りである男は「政吉」。
この政吉は、器用にも紋次郎と同じように楊枝を飛ばせるのである。七年前、飯田で政吉は小文太の妹「奈緒」を紋次郎だと騙って手を出し、その後女郎屋に売り飛ばした。苦界に身を沈めた奈緒は、ニセ紋次郎の政吉のことをずっと想い続け、その後病死する。政吉は、今は海野で「大屋の政吉親分」として、先代から一家を引き継いでおさまっている。
この男のために紋次郎は、ずっと小文太に命を狙われ続けたのである。

「新たなる旅立ち」
板鼻宿に逗留していた紋次郎に、八州廻りの「山田彦次郎」の追手がかかる。
凶状持ちの無宿人が、宿内に長くとどまることは許されない。この山田彦三郎は、無宿渡世人を目の敵にして厳しく取り締まっている。
紋次郎が身を隠していた光明寺にも追手が迫る。その危機を救ったのが、同じく寺に逗留していた「越堀の浜蔵」である。
浜蔵は以前から、紋次郎を正真正銘の「上州長脇差」として憧れていたのである。いつかは紋次郎のようになりたいと修行の旅を続けていたのだが、病を持つ身となり、この寺に身を寄せていたのだ。
浜蔵は、紋次郎の身代わりとなって自ら炎の中に身を投じ、紋次郎として死ぬ。憧れの紋次郎になりきり、紋次郎のために命を差し出すことで、浜蔵はまさに「上州長脇差」となった。「ニセモンジローシリーズ」の中では、最高位に位置する存在であろう。

日々紋次郎「ニセモンジロー」

「観世音菩薩を射る」
作品の冒頭でニセ紋次郎が早々に登場する。長身で三十半ばすぎ、口には長楊枝を咥えている。
「紋次郎だな」という問いかけに「そうよ」と得意げに答える渡世人。親分の意趣返しだと言われ、三人組の渡世人にあっさりと殺される。
このニセ紋次郎は定吉という深谷の薬種問屋の伜で、紋次郎のようになりたいと楊枝を咥え、紋次郎と名乗っていたという。
一方、本物の紋次郎はスズメバチを追い払うために楊枝を使い果たし、咥えていないため紋次郎だとは気づかれない。顔を知らない者にとっては、偽物と本物の見分けはつかないものである。

「雪の中の大根」
闇討ちされた藤三郎は、「木颪(きおろし)の本次郎にやられた」と言い残して事切れる。
それを聞いた百姓衆は、「こがらしのもんじろうにやられた」と聞き間違えてあちこちに言いふらし、まことしやかにひろがってしまう。
本次郎はニセ紋次郎を装うつもりはなかったのだが、結果的には紋次郎に罪をかぶせてしまい、兄貴分の藤三郎の意趣返しをしようと紋次郎に刃を向ける。全くもって、厚かましい。

しかしこうして見ると、かなりたくさんの「ニセモンジロー」が登場している。偽物が出てくるということは、それだけ紋次郎が有名だということである。
紋次郎に憧れ、あやかりたくて真似をする者、罪を被せるためだったり、やっかみだったり、成り行き上そうなってしまったとか……様々な理由があるのだが、紋次郎にとっては迷惑な話である。

ただ、「越堀の浜蔵」だけは別格である。浜蔵が眠る土饅頭には、「上州長脇差之墓」と書かれた墓標が建つ。浜蔵は本物の上州長脇差として、三途の川を渡ったのである。その堂々たる心意気には、惚れこんでしまう。


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Re: 日々紋次郎「ニセモンジロー」

ご無沙汰しておりました。

ニセ黄門様は、大抵はその辺のジジイで、もてなしてもらいたいというだけの動機なのですが、ニセ紋次郎は、動機もさまざま。
ミステリー作家としての笹沢左保の面目躍如、といったところですかね。

あと、テレビ版の「月夜に吼えた遠州路」も、ニセ紋次郎と言えますね。

個人的には「人斬りに紋日は暮れた」に出てくる、紋次郎を名乗る卑劣な男。
私としては、あれこそが究極のニセ紋次郎です。(笑)

  • 20170508
  • TOKI ♦nhNJg39g
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Re: 日々紋次郎「ニセモンジロー」

TOKI さま、コメントをいただきありがとうございます。

ご無沙汰しておりましたが、お元気でいらっしゃいますか。

「月夜に吠えた……」では、現場に楊枝を落として紋次郎の仕業とする……という手口でしたね。
楊枝つながりでいくと、「海鳴りに運命……」もありましたっけ。
まさに、「楊枝一本、難儀の元」ですな。

「人斬りに……」は、言語道断でしょうね。


  • 20170508
  • お夕 ♦-
  • URL
  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「ニセモンジロー」

時代劇で偽物と言うとやはり黄門様を真っ先に思い浮かべますが、紋次郎にも偽物がいたのですね。

  • 20170513
  • カノッチ ♦-
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  • 編集 ]
Re: 日々紋次郎「ニセモンジロー」

カノッチさま、コメントをいただきありがとうございます。

そうなんです。紋次郎にも度々偽物が出てくるんですね。
黄門さまですと格さん、助さんと三人セットの偽物が必要ですよね。偽物になることで得をすることが多いでしょうが、紋次郎の場合は得になることは少ないと思いますね。逆に災難が降りかかる……(笑)。

結構時代劇シリーズには、偽物が出てくるパターンがありますね。

  • 20170513
  • お夕 ♦wikz35BA
  • URL
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